MRワクチンの接種率の低下と麻疹発生

特に、予防接種推進専門協議会がお知らせを出しているように、MR(麻疹風疹混合)ワクチンの接種率低下は大問題です。麻疹も風疹も感染力が強いため、95%以上のワクチン接種率を保つことが大事ですが、2021年の接種率は93.5%でした。

2015年以降、日本では土着の麻疹を排除できていたのですが、去る4月27日に茨城県で麻疹感染者が報告されました。インドに渡航した30代男性で、4月23日に東海道・山陽新幹線のぞみで新神戸から東京駅、さらにJR在来線などで茨城県みらい平まで移動したことが公表されています。麻疹はすれ違うだけで感染することがあるほど感染力が高く、また潜伏期があるため、注意を呼びかけるためです。

実際、東京都で、5月10日に30代女性、11日に40代男性の麻疹感染者が報告されました。海外から帰国した30代男性と同じ新幹線を利用していて、その時に感染したとみられています(※5)

麻疹は、かつて「命さだめ」と呼ばれて恐れられました。現在でも感染した人の30%が合併症を起こし、高度先進医療を受けたとしても1000人に1人は命を失う危険性がある怖い病気です。幼い頃に麻疹にかかり、2〜10年くらい経ってから性格が変化して知能が低下したり、動作が緩慢になり歩けなくなったりする「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という病気になることもあります。SSPEは難病で有効な治療法がありません。「ワクチンを受けるよりもかかったほうがいい」と言う人がいますが、軽々しくそんなことを言ってはいけないのです。

※5 東京都福祉保健局「麻しん(はしか)患者の発生

痒さに、肌をかいてしまう人
写真=iStock.com/Singjai20
※写真はイメージです

恐ろしい麻疹もワクチンで防ぐことができる

ただ、麻疹は恐ろしい病気ではあるものの、MRワクチンで防ぐことができます。海外から帰国した男性の麻疹ワクチン歴は1回だけでした。2006年より前はMRワクチン2回接種ではなかったので、他の感染者にも十分な抗体がなかったのではないでしょうか。

これまでにMRワクチンを2回接種したかどうかは、母子手帳を確認すればわかります。接種していない人、接種したかどうかわからない人は、ぜひ内科などでキャッチアップ接種をしましょう。昭和37年度~昭和53年度生まれの男性には第5期の風しん追加対策があって風疹ワクチンかMRワクチンを選べますし、市区町村によっては妊娠を希望する女性や妊娠中の女性および同居人にMRワクチンの助成があるので、保健所に確認してみてください。自費でも1万円くらいで接種することができます。

また、MRワクチンを2回接種していたとしても、感染予防効果は一生涯続くものではなく数十年後には抗体価は下がります。ですから、心配な場合はぜひ接種してください。抗体価を検査せず、接種しても問題ありません。ご自身だけでなく、子供や赤ちゃん、病気の人を守ることにもつながります。1歳になったのにまだMRワクチンを一度も接種していないお子さんは、早めに受けましょう。2回目の接種は就学前の1年間なので、予診票が手元に届いたら受けましょう。MRを2回受けたのに妊娠中の検査で抗体価が上がっていなかったという人から相談を受けることがありますが、測ることのできない細胞性免疫はできているためおそらく大丈夫です。心配な場合は、出産後に3回目のMRワクチンを追加で受けることもできます。