「25も200の差も同じ目盛り」に隠されたトリック

さらに、ステータスバーの目盛りにもちょっとしたトリックがあり、25スターと50スターの目盛りの間隔が、200スターと400スターの目盛りの間隔と同じになっています。

相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)
相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)

25の差も200の差も同じ目盛りというのはグラフとしては明らかに間違いなのですが、行動経済学的に言えば優れた戦略。顧客はよく吟味せずにパッと見た雰囲気で判断するため、「もう50スター集めた。頑張って最後まで集めよう」と誘導されてしまうのです。

実際には、50スターまでよりも、その先の400スターまでのほうが、集めなければならないスターは当然、多くなります。こうしてスターバックスのこの「スター」制度は、多くの利用者を集めています。

多くの企業は人の非合理な意思決定と行動のメカニズムを知り、競争相手より優位に立とうとしているので、行動経済学を使っていることを企業秘密として公言しません。いわばお客さまには知られたくない“公然の秘密”というわけなのです。

シャーロック ホームズ の 白い背景にスタジオでシルエット
写真=iStock.com/OSTILL
※写真はイメージです

しかし、行動経済学を学ぶと「このサービスは行動経済学が裏にあるな」とすぐにわかるようになる――それどころか、ひとたび行動経済学を学ぶと、世界が違って見えてきます。

あらゆる企業の戦略が張り巡らされた今、教養としての行動経済学を身につければ、二度とそれまでのような素朴なものの見方はできなくなるでしょう。

・消費者側としては、企業の戦略に乗せられないように賢くなれる。
・企業側としては、顧客にサービスや商品をより多く楽しんでいただくための戦略家になれる。

これこそ、世界のビジネスパーソンが行動経済学を学ぶ理由なのです。

【関連記事】
仕事ができる人は知っている…「よろしくお願いします」より効果的なメールの締めのフレーズ
東京随一の"セレブ通り"を走る富裕層が「テスラやレクサス」を選ばないワケ
部下に「違うんだよ」とは絶対言わない…仕事のデキるリーダーが異質な意見が出た時にする質問
「うちは紙ストローは作りません」岡山の日本一のストロー会社が「脱プラ運動」に真っ向から対抗した結果
経産省が出てきた時点でアウト…日立の元技術者が「日本の半導体の凋落原因」として国会で陳述したこと