認知症になる前に「家族信託」を使う

財産のなかで、家族信託を使い管理したい財産を「信託財産」といい、主に現金、不動産、未上場株式の3つが対象になります。このように金融商品だけではなく、不動産も含めて管理、財産処分を行うことができる自由度の高い信託です。

財産を預けたい自分(妻)が「委託者」になり、財産を預かり管理や処分をする子どもが「受託者」、財産から得られる利益を受け取れる自分、またはほかの家族が「受益者」となり、委託者と受託者が書面を交わします。

署名するシニアの手元
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成年後見制度と違って、家庭裁判所に提出する書類がないので、財産の管理がしやすいのが特徴です。家族信託契約書を作成してもらう専門家への報酬はかかりますが、後見がスタートしてから本人が亡くなるまで毎月、数万円かかる後見人また後見監督人への報酬が必要ない、といったメリットがあります。

家族信託を利用するための手続きの手順は、①資産がどれだけあって、何に使いたいのか目的を明らかにします。②次に相続に詳しい司法書士や行政書士などの専門家に相談します。どの程度費用がかかるのか見積もりの確認も必要です。③依頼を受けた専門家は、信託内容を契約書にします。専用の口座開設が必要な場合は、専門家と受託者が一緒に金融機関に出向き、後日、委託者と受託者が専門家とともに公証役場に行って、契約書の作成をします。

契約書作成の手数料が高額になることもある

認知症になっても自分や家族が安心して暮らせるように、さらに、亡くなったあとも自分の財産を自分の思い通りに親族に渡すことができるように、家族信託を選択する人が増えてきたそうです。

自分の死後の財産の行く先を事前決定しておくことができる便利な制度ですが、気をつけたい点もあります。

成年後見制度のように、成年後見人や監督人に毎月支払うコストはかかりませんが、契約書を作成する専門家への手数料が意外とかかる点に注意が必要です。手数料の相場は信託する財産の1%ですが、高額な手数料を取る専門家もいます。また、信託財産は相続財産ではなくなるため、信託財産と相続財産の割合や内容によっては、親族間トラブルにもなりかねません。両方の対策を同時に考えてくれる専門家を選ぶことが大切です。

「死後のこと」を含めてどうしたいのか、法定相続人になる家族と話し合うと、後のトラブルを防ぐことができます。大事な財産と家族を守るために検討してみましょう。