夜になって皆がテントで寝静まると、異変が起きた。羽毛の詰まった寝袋が暑すぎることから、クレッチマーさんはファスナーを開けたまま寝ていたという。

「すると首筋に息を感じ、誰かに愛撫あいぶされるのを感じました。私はただ固まって、何事もなかったかのようなふりをしました。もしかしたら過ぎ去ってくれるかもしれないと願ったんです」

このような行為は4~6カ月ほど続いた、とクレッチマーさんは振り返る。心に負った傷は大人になっても晴れることなく、何年もカウンセリングを受け、抗うつ剤に頼る日々が続いたという。「4回結婚し、離婚しました」ともクレッチマーさんは告白している。

キャンプファイヤーで行われた「パンツパーティー」

ひとけのない山中で活動する特性上、スカウトをねらった性的虐待の多くはキャンプ地で多く発生している。健全な精神を育むはずのキャンプ地が、開けた密室と化してしまっているようだ。

米シンクタンクのチャイルドUSAは、性的虐待の51.5%がキャンプ施設である「スカウトキャンプ」で発生しているとの調査結果を公表している。その他スカウト活動に関連したケースも14.3%を占めるという。

チャイルドUSAによると被害者の77.5%が、直接素肌への接触を受けた。同報告書は被害者たちに直接状況を尋ねた結果として、「その他の具体的な行為としては、オーラルセックス、自慰行為、挿入行為がある」とも指摘する。このうち複数回答で、オーラルセックスを伴ったケースが約半数、自慰行為が約半数、挿入行為が約3分の1報告されているという。

ほかのスカウトたちの面前で、公然と行われる行為もあるようだ。タイム誌は別の事例として、ボランティアで参加した人物が性的虐待を目撃したケースを報じている。

それによるとこの隊のリーダーは、中学生ほどの年齢のスカウトたちと共に、森の中でキャンプファイヤーを囲んでいた。するとリーダーは突然、立ち上がって互いにズボンを下ろすよう促したという。「パンツパーティー」と呼ばれるこの指令は、遠出の際に頻繁に起きていた。

たき火
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同誌によるとこのボランティアは、別のおぞましい発言も見聞きしている。ボーイスカウトの集会へと車で送っている途中、あるスカウトに彼女ができたことを聞きつけた隊長が、「彼女とセックスしたら5ドル払うよ」と持ちかけたという。