17億円かけた大作が目標動員数の半分にも及ばず

ドラマ『愛の不時着』で株を上げた俳優ヒョンビンと、韓国映画界を代表する俳優として名高いファン・ジョンミンのダブル主演作である『交渉』は、2007年にアフガニスタンで起きた韓国人拉致事件をモチーフにしたアクション映画だ。豪華キャスティングと派手なアクションシーンが売りで、制作費は150億~170億ウォン(約15億~17億円)に達すると報じられており、損益分岐点はおよそ350万人。だが蓋を開けてみたら観客動員数は172万人で、目標の半分にも及ばない低調な興行成績だった。

パク・ソジュン&IU主演の『ドリーム』は、予期せぬ事件から選手生命の危機に瀕したサッカー選手が、起死回生のために“ホームレス・ワールドカップ”韓国代表監督の座を引き受けたことから始まる笑いと感動のスポーツ映画だ。世界的な人気を得ている主演俳優2人に加え、『エクストリーム・ジョブ』(2019年)で1600万人を動員したイ・ビョンホン監督の新作ということで期待が高かったが、損益分岐点の220万人(制作費139億ウォン)まではほど遠い110万人という成績に留まった。

ほかにも『対外秘』(75万人)、『幽霊』(66万人)、『リバウンド』(69万人)など、100億ウォン(10億円)以上の制作費を投入した作品がそろって興行に失敗。こうした状況を見て、今年公開予定だった作品が相次いで先送りされる現象が起きている。

コロナ禍以前に作られた90本が倉庫で眠っている

映画製作会社「ハハ・フィルムズ」のイ・ハヨン代表は、現在の韓国映画界は長期低迷の入り口に立たされていると主張する。

「業界では現在、80~90編あまりの作品が倉庫で眠っている。これは国内のスクリーンを2年間埋めることができる分量だ。それに加え、現在上映されているのはコロナ禍前に作られて“賞味期限”が切れた作品ばかり。急激に変化している観客の好みに追いつけず、一様に失敗している。今の状態が続けば、これまでは洋画と国内作品のシェアが50対50を維持してきたところから、洋画の比重が増えていく。一度韓国映画を離れた観客は戻ってこないだろう。今はまさにその入り口に立っている」

韓国の全国紙「朝鮮日報」は「投資金回収が長期間できずにいる状況で投資が途絶えている」とし、「新しい映画を製作できない問題も深刻だ」と指摘している。同紙は、映画監督の証言を借りて「製作資金の70~80%をファンド運用会社、20%以下をCJやロッテなどのメジャー配給会社が担当しているため、これらの会社が資金を提供しなければ映画製作そのものが不可能な状況」と説明した。(「朝鮮日報」4月15日「公開作が半分に激減、マーケットシェアは29%……韓国映画最悪の危機」)