フィリピンの「ピープルパワー革命」(1986年)もグルジアの「バラ革命」(2003年)も、3.5%の市民不服従がもたらした社会変革です。ニューヨークの「ウォール街占拠運動」(11年)やバルセロナの「座り込みデモ」も、少人数の抗議活動がSNSで拡散し大きな影響をもたらしました。

過半数ではありません。本気で変えようとする人が3.5%集まれば、社会は変えることができるのです。諦めることはありません。

資本主義は時間を無限に奪う

社会のあり方を変えるには、まず社会のシステムを知る必要があります。つまり、資本主義について知る必要があります。

若者は資本主義にNOと言っている! アメリカ国民の社会主義と資本主義への見方

カール・マルクスは資本主義の本質を「資本の回転を加速させる経済」と言いました。例えば、農家が耕運機を導入すると、農作業は効率化します。しかし、資本主義では隣の農家が新型の耕運機を導入すると、旧型を使っている農家は生産性や価格競争で敗れてしまいます。結果、旧型の耕運機は廃棄され新型への買い替えが進む。そうして技術革新の回転が速まるのです。

さらに言えば資本主義は、生産を急ぐ経済です。生産設備に投資してできるだけ速くモノを作り、できるだけ速い流通に乗せ、できるだけ早くキャッシュに換える。そうして回収したキャッシュを、次の投資に使うのです。資金を速く回すことに成功した者が、社会の勝者になります。

かくして、資本主義では回転のプロセスを速めていくことが、すべてにおいて是とされます。マルクスは「資本主義のエコノミー(節約)とは、時間のエコノミー(節約)である」とも言いました。無駄を排除して時間を圧縮し、生み出した時間をさらなる資本の増殖に使う。時間を圧縮したら、次は空間を圧縮する。通信や移動手段を革新し、生産拠点や市場を拡大していく。

もちろん、マルクスが生きたのは19世紀ですから、通信手段は手紙か電報、移動手段は蒸気機関車や蒸気船が主でした。そうした技術が発展した先に、今日のような情報化社会やグローバル化があることを、マルクスは見抜いていたのです。

マルクスの予測が現実となった今、私たちは資本の回転をどれだけ速くしても、ちっとも幸せになれないことに気がつきました。技術革新により半分の時間で仕事ができるようになれば、半分の時間は余暇に充てられるようになるはずだとケインズは予測しましたが、実際にはもっと忙しくなったのです。それは、量が効率化を上回って増大しているからです。

手紙はメールになって書くのも伝えるのも速くできるようになりましたが、そのぶんやり取りが増えて読んだり仕分けたりに時間がかかるようになりました。高速鉄道や飛行機によって速く遠くに行けるようになりましたが、そのぶん出張が増えました。技術が進んでも効率化の努力をしても、私たちはますます忙しくなるばかりで、いつまで経っても余暇の時間がつくれません。