親族、地域社会全体で子どもを育てる地域
県民性などとの関連で、感覚的に感じるのは、九州などでは、祖父母や親戚、地域社会全体で子どもをかわいがり、成長を喜ぶ気分が強い印象がある。
私は沖縄で勤務していたことがあるが、沖縄では、たとえば夫婦が離婚しても、実家の祖父母や兄弟姉妹が子育てをわりに積極的に引き受けると耳にした。また、習慣で男性の一族からしか養子を取れないので、男の子ができるまで何人も産むし、兄弟のところに男子がいないと、頑張って2人目の男子を得ようとする傾向があるので出生率が高くなると言われていた。最近ではそういう特殊事情は希薄になってきたようだが、完全になくなったわけでもないようだ。
保育園とか、医療費補助とかは、市町村レベルで決められるので、都道府県のなかの市町村同士ではそれなりに差が出るが、都道府県全体の数字に影響しているかと言えば疑問である。
「イクメン県」は出生率ではパッとしない
一般常識からすると意外なのは、男性の子育てへの参加との相関性だ。なんと、男性の子育て参加が少ない都道府県ほど、出生率が高い傾向がある。
総務省の社会生活基本調査(2021年)によると、「6歳未満の子どもを持つ夫の家事関連時間」(※)の全国平均は1.54時間であり、都道府県別の数字は「イクメン⁉ランキング」としてまとめられている。
※夫婦と子どもの世帯、土日を含む週全体の平均。家事関連時間とは、「家事」「介護・看護」「育児」「買い物」の時間
このランキングの下位、つまり夫が家事をしない県には石川、大分、熊本、山口、愛媛、長崎、岡山、兵庫、佐賀、沖縄と、出生率トップクラスが多く並んでいる。ちなみに、上位5県は奈良、新潟、高知、和歌山、千葉で、出生率ではパッとしないところばかりだ。
先ほど紹介したソニー生命の調査でも、「夫がよく家事に参加している」の上位は、群馬、東京、岩手、三重、和歌山、「夫がよく子育てに参加している」の上位は、宮崎、岩手、山梨、佐賀、北海道、神奈川、兵庫といったところで、出生率下位の県が目立つ。
こうした数字からは、「男性が家事や子育てを手伝うようになれば少子化は改善する」という前提での政策展開は、あまり効果がないのではないかという疑いが出てくる。