出生率と相関するデータはなかなか見当たらない
東北については納得のいく理由が見つかったとはいえ、出生率の「西高東低」は、いわゆる県民性とか社会経済についてのさまざまな数字との相関性がなかなか見いだしにくい。
共立総合研究所が、文部科学省「平成25年度全国学力・学習状況調査」(小学6年生対象)の分析によりランキングした「『いい子どもが育つ』都道府県ランキング」(2013年度データ)というのがある。ここで1位になったのは秋田だが、2020年の出生率では44位、出生率トップの沖縄は46位だから、まったく関係がなさそうだ。
通勤・通学時間は、出生率が低い大都市周辺で長いが、同じ地方圏のなかで比較してみると、出生率にはほとんど影響していない。
平均寿命、喫煙、飲酒、持ち家、家の広さ、女性就業率、子どもの学力、睡眠時間……このあたりも相関性はない。医師数を見てみると、西日本のほうが人口比の割に国立医大の設置が多いため、一般に西日本で多く東日本で少ない傾向があり、少し相関性はあるが、これが出生率に関係しているかはわからない。
三世帯同居率は、東北や日本海側で高く九州などでは低い。その結果、同居率が低いほうが、出生率が高いことが多いともいえるが、断定できるほどの相関性はない。
「子どもにお金をかけたい県」は出生率が高い
ソニー生命保険株式会社が2015年に行った「生活意識調査」は、主観的な意識の問題だが、少しヒントがある。
「子育てのしやすさが自慢」は、福井、富山、香川、鳥取、山口が上位だが、比較的、出生率が高い地域だ。
お金の使い道について、住宅とか健康などとの相関性はないが、「教育にお金をかけたい」は、徳島、福岡、大分、兵庫、広島、愛媛が上位だから少し関係はしている。やはり子どもの将来が楽しみだ、自分より子どもにお金をかけたいという意識のところは出生率も高いようではある。
また、男性の平均初婚年齢(2021年、全国平均30.9歳)を見ると、初婚が早い上位道県が岡山、山口、宮崎、広島、佐賀、福井、徳島であり、初婚が遅い下位は関東地方が多い。女性(同、全国平均28.6歳)では、上位が愛知、愛媛、茨城、岡山、沖縄、下位が和歌山、北海道、兵庫、福島、福岡であるから、初婚が早い都道府県のほうが、出生率が高いという傾向は間違いなくある。