「コース料理は初めて」というカップルが9割の会場も
広がっているのは、経済格差が生む、かつては当たり前だったことをできなくなっている「経験の格差」だと私は考えています。
2015年頃からでしょうか、ブライダルの試食会に参加したカップルから「コース料理を初めて食べました」という感想を聞くことが増えました。先述したCランクの施設では7〜9割近くに上り、Bランクの誰もが名前を知っているような全国展開のホテルでさえ4割近くいます。
結婚するカップルの親はバブルを経験している世代が中心です。それでいて子ども世代の経験が少ない理由の1つは、ファミレスをはじめ低価格の外食が増えたことでしょう。また、ワリカンが当たり前の世代なので、バブル期のように「デートで高級レストラン」「クリスマスはシティホテルに宿泊」というような“ご馳走文化”がなくなっていることも関係あると考えています。
「違いが分からないから安いほうでいい」
コース料理の経験がないカップルが増えていることで、ウエディングの現場でも変化が起きています。ブライダルフェアでは価格の異なる何通りかの料理を用意し、試食して比較していただくことがあります。例えばAとBを食べていただいた場合、以前なら味の違いに納得して、高くてもAを選んでいただく方が圧倒的に多かったのです。
しかし、コース料理が初めての方には、安いBも驚きを持って受け止めていただけるため、Bが選ばれることが増えました。もちろん予算に合わせてBを選ぶという方は以前からいましたが、「違いが分からないからBでいい」という理由で選ばれるのは、料理を提供する側としてはとても残念なことです。
また、試食会では「これまでにどこで試食をしましたか?」とアンケートをとることがあります。料理を重視する会場Cであれば、「その前に訪れたのが近隣の会場Dなら、ほぼCを選んでいただける」というように、過去のデータに基づく自負があり、成約を予測できました。しかし、今はそれも難しくなっているのです。