手術による中絶と薬による中絶の違い
手術と薬剤による中絶では、どのような違いがあるのだろうか。もっとも大きいのは、中絶の完了までにかかる時間の長さだ。
掻爬法や吸引法などの中絶方法は、ほとんどの場合は手術日に完了することができる。手術自体は10~15分程度で終わり、2時間ほどの待機時間を経て、日常生活に戻ることが可能だ。一方経口中絶薬の方は、陣痛のような痛みが訪れ、血液とともに少しずつ胎嚢や子宮内容物が排出されていく。
「経口中絶薬の場合は、少しずつ体外に出ていくため、その後の予定を立てづらいのです。また、『メフィーゴパック』の場合、被験者のうち93.3%の人は24時間以内に中絶が完了したそうですが(※2)、割合としては少ないとはいえ、完了しない場合もあります。その場合は、手術をしなければなりません」(宋さん)
※2 厚生労働省「いわゆる経口中絶薬『メフィーゴパック』の適正使用等について」
経口中絶薬は決して「魔法の薬」ではない
経口中絶薬は決して万能ではなく、当然リスクもある。2000~2006年のフィンランドの調査によれば、有害事象の発生率は、出血は経口中絶薬で15.6%、手術で2.1%、不完全中絶は経口中絶薬で6.7%、手術で1.6%と、いずれも経口中絶薬のほうが発生率が高い結果となっている(※3)。
「経口中絶薬は魔法の薬のように言われ、リスクが過小評価されています。実際は、吐き気、発熱、腹痛、下痢、出血、体の痛みなどの副作用が起きる場合があります。特に痛みは強いことが多く、痛み止めを飲むとはいえ、我慢せざるをえないケースもあるでしょう。海外の経口中絶薬が選択できる国でも、みんなが経口中絶薬を選んでいるわけではありません」(宋さん)
経口中絶薬という選択肢が増えることはいいことだが、あくまでもメリットとデメリットを正確に理解したうえで、選択したほうがいいと、宋さんは話す。では、いざという時、経口避妊薬、吸引法、掻爬法のどれを選んだらいいのだろうか。
「どの方法を選択するかは、その時の体の状況、子宮の形や向きや硬さを診たうえでの医師の判断にもよりますから、担当医に相談しながら決めるのが一番いいと思います。もちろん、ある程度の希望を伝えることもできます」(宋さん)
※3 Immediate Complications After Medical Compared With Surgical Termination of Pregnancy