個人情報流出、著作権侵害、サイバー犯罪も

ChatGPTは入力したものから学ぶ仕組みのため、個人情報流出や著作権侵害の問題も起きている。たとえば韓国サムスン電子が社員にChatGPTを利用させたところ、ソースコードなど3件以上の情報漏洩があったという。

前述の通り、パナソニックグループは国内全社にAIアシスタントサービス「PX-GPT」を導入したが、このようなリスクに備え、社内情報や企業秘密、個人情報などを入力しないなどのルールを定めている。

フィッシング詐欺やマルウェアなどのリスクも高まる。フィッシング詐欺に使うメッセージもマルウェアも、ChatGPTを利用すれば容易に作成できてしまうためだ。

事実、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズは、ChatGPTによる悪質なコード生成がサイバー犯罪者の最新トレンドとなりつつあるとしている。

世界全体の3億人分の仕事がAIに奪われる

このように利用リスクがある一方で、「AIが我々の仕事を奪う」という問題は現実になってきている。

米金融大手ゴールドマン・サックスが今年3月に公表した報告書は、生成AIによって世界全体の3億人分相当の仕事が置き換えられる可能性があると結論付けた。特に事務職と弁護士がもっとも影響を受け、建設作業などの肉体的に負担が大きい仕事や屋外での業務はほとんど影響がないという。

さらに同社のアナリストたちは、米国や欧州では現雇用の約3分の2がAIによる自動化の影響を受け、全職業の最大4分の1はAIが完全に行うようになるとも試算しているのだ。

ゴミ箱に人を投げ込む巨大ロボット
写真=iStock.com/Moor Studio
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アメリカでは、創作活動を巡る議論も巻き起こっている。米脚本家組合(WGA)が、AIが生成した文章を「文学作品」や「原作」として扱わない、脚本家による作品をAI学習に利用しない、といった規制を要求したが、ハリウッドをはじめとしたメディア業界は拒否。脚本家たちによる大規模ストライキに発展した。