「質か量か」という議論について

「まとめない」とは、「頭に浮かんだことを手あたり次第アウトプットする」「クオリティを気にせず、とにかく書き出してみる/口にしてみる」ということです。これについては仕事に付きものの「質か量か」という議論もからんでくるので、先に整理しておきます。

働き方改革が普及することで、「長時間勤務や仕事量が多いのは良くないことだ」という価値観が世の大勢を占めるようになりました。私の前職である電通もこの流れを受ける形で、勤務時間の上限が設定されたり、有給休暇の消化が義務付けられています。

もちろん、私自身も長時間勤務は是正されるべきだし、有給休暇はきちんと消化したほうがいいと思っています。

しかし、そもそもこの問題については、量か質かの二項対立にすることで議論を煽る人が多いので、今のような大げさな話になっている面が大きいと思います(ちなみに、二項対立は議論にしやすいものの、二項対立にすることでかえって課題解決から遠ざってしまう場合が多いので注意しましょう)。

個人的な結論としては、量と質を二項対立ではなく、因果関係で捉えるべきだと思っています。つまり、「量をこなすことで質を生むことができる」と考えるのです。

【図表】量と質を二項対立ではなく、因果関係で捉えるべき
出典=『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)

こんなことを言うと、私が長時間勤務に賛成しているように思われるかもしれませんが、そうではありません。スキルや経験は自分の中に蓄積できるので、ある程度の量をこなし、仕事に熟練すれば、同じ仕事であってもかかる時間は短くなっていきます。

もしかしたら、よく言われる「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という言葉は、そういうことを指すのかもしれません。