前年比2割減、3割減は当たり前。「年収崩壊」とまでいわれるこの時代、幸せに生きるにはどうすればいいか。お手本は成熟社会の代名詞イギリスにあった。
井形慶子
長崎県生まれ。28歳で出版社を設立し、英国生活情報誌「ミスター・パートナー」を創刊、同誌編集長。90回以上の渡英経験を生かした著書多数。http://www.mrpartner.co.jp

イギリス人は、子どもとのつながりは生まれてから18年と割り切っています。子どもは基本的に18歳になったら家を出て、友達とルームシェアをしたりしながら独立して暮らします。大学に進むにしても、学資ローンを自分で借りて細々と返し続けます。驚いたのは、先日、19歳の子が両親と食事に行ったところに居合わせたのですが、その子は伝票を取って親の分も食事代を支払うのです。

日本人は逆に、子どもとの関係は死ぬまで一生続くと考えます。子どもがいくつになっても、たとえば帰省費用がないといえば親がすぐに出してあげます。その延長上にあるのが振り込め詐欺。イギリスではありえない犯罪です。「そんなこと、自分で責任をとれ」と電話を切られておしまいです。

ところが、最近つくづく思うのは、ドライに見えるイギリス人の家族関係のほうが日本人よりもよほど親密ではないかということです。印象的なのは、イギリスの子どもは自分の家のことを細部までよく知っているということです。

初めての家を訪問すると、小さい子どもが「この棚は、お父さんがこういう釘の打ち方をしてつくったんだ。だからこういうふうに動くんだよ」と自慢げに説明したり、リフォームする前の写真を持ってきて見せてくれたりするのです。