投資をすると必ず資産が増えるわけではない
岸田政権は「新しい資本主義」を掲げ、「資産所得倍増プラン」を打ち出しています。
資産の大半を現金・預金として保有している日本人にとって、昨今の物価上昇は資産の一部を投資に充てるインセンティブになり得ます。
なぜなら、インフレになると、現預金の価値が目減りするからです。
また、「老後2000万円問題」や「人生100年時代」という言葉を考えれば、現役時代によほどの高給をもらって十分な貯金をしていない限りは、やはり投資などで自分の資産を増やす必要が出てきます。
しかし、ここで忘れてはいけないのは、投資をすると必ず資産が増えるわけではないということです。
これもまた当たり前の話だと思うかもしれませんが、実際には多くの方がきちんと理解していないのです。
仮にすべての人が投資にはリスクがつきものであること、うまい話は存在しないことを認識していれば、日本国内での投資詐欺の被害規模(2020年は4488億円)はもっと小さいものとなっているでしょう。
「所得倍増計画」が消え「資産所得倍増プラン」に
岸田首相は2021年に行われた自民党総裁選の際に令和版「所得倍増計画」を公約として掲げましたが、気付けばその公約は消えてしまい、資産所得倍増プランに成り代わっています。
私はこの変化にはいくつも問題があると考えています。
1つ目はそもそも現時点で投資に資産を充てる余裕がある人は、特に若者のあいだではそれほど多くないということ。
2つ目は前述の通り、投資をしたからといって、必ず資産が増えるわけではないということ。NISAを恒久化したところで、投資対象が値上がりして含み益が発生した後に、利益を確定するタイミングで初めて非課税の恩恵を受けられるわけです。もし投資対象が値下がりして損失が発生した場合はNISAの恩恵はないのです。
当然、資産所得倍増プランなどの施策は投資未経験者が第一歩を踏み出す契機になるとは思いますが、資産所得の倍増というのは目標にするにしては不確実性が高すぎるのです。