経営者は「割に合わない」仕事だが……
まるで芸能人のようなスター経営者にスポットライトが当たる昨今、そうした「セレブ」になりたいというだけで経営者を目指す輩が少なくない。地味な黒子型経営者のジェニーンはそうした手合いが憧れる経営者とは180度異なる。しかし、今も昔も経営者というのはジェニーンが本書で描いているような「割に合わない」仕事だと考えた方がよい。
ジェニーンは「傑出した結果を達成することに成功するマネジャーになるために、自分の人生のどれだけを捧げる気があるか?」を自らに問うべしと言う。「人生の多くの快適な面を放棄する決意と高邁な職業意識が自分にはあるだろうか?」と。経営とは孤独で、ストイックで、自己犠牲を伴う仕事である。しかし、それでも、それだからこそやりがいのある仕事だ、とジェニーンは言う。「もしもう一度人生をやり直すとしたら、違ったようにするか?私はそうは思わない。今、自分の過去のすべてを顧みる時、私は自分がビジネスの世界で過ごしてきたすべての歳月を楽しんだと断言できる。」
この本を読めばいい経営者になれるわけではない。当たり前である。しかし、自分がはたして経営者を目指していいかどうか、それだけの覚悟はあるかどうかは、この本がいやというほどわからせてくれる。その意味で経営者にとって「最高の教科書」なのである。僕はどうかというと、自分は絶対に経営者にはなれない、向いていない、なろうと思わなくてよかった、と一読して痛感したのは言うまでもない。これからも口舌の徒としてユルユルと生きていこうという決意を固めた次第である。