2023年には人口世界一、若い世代が多い

したがって、人口規模が大きく、かつ稠密になるのは、自然の摂理といえるかもしれない。独立した1947年時点でもすでに3億4000万人ほどの人口大国だったとされるが、その後も人口は増えつづけ、半世紀後の1997年には10億人を突破した。独立から75年後の2022年の国連推計では、インドの人口は14億を超えており、翌2023年には中国を上回って、世界一となることが確実視される。

規模の大きさにくわえて、注目しておきたい特性は、その人口構成だ。日本では、少子化と高齢化が急速に進みつつあり、生産・消費の中核を担う世代の減少が深刻な問題となっている。長く「一人っ子政策」をつづけてきた中国においても、同様の傾向が指摘されはじめている。インドはこれとは対照的だ。2019年に行われた総選挙の有権者数は、9億人だった。18歳以上の男女が有権者であるから、18歳未満の「子ども」がなんと4億人以上もいることになる。若い世代の多い「ピラミッド型」の人口構成だ(図表2)。今後数十年間、生産・消費人口がこれだけの規模で増えつづける国はほかにない。

「人口ボーナス」が経済成長の土台

この「人口ボーナス」こそ、インドの経済成長の土台だ。長らく「眠れる巨象」などと揶揄されてきたインド経済だが、1991年に本格的な経済自由化に踏み切って以降、段階的に規制緩和や民営化、外資の導入が進んだ。年率にしてほぼ5~10パーセントの経済成長がつづく。とくに2014年のモディ政権発足以降に絞れば、中国と同等か、あるいは上回る成長率の年がほとんどだ。長期のロックダウンを余儀なくされたコロナ禍の2020年こそ、日本以上の大きなマイナス成長となったものの、そこからの回復は比較的早かった(図表3)。

順調な経済成長に伴い、国内総生産(GDP)は着々と伸びている。アメリカ、それを猛追する中国のビッグ2とはまだまだ比べようもないが、それ以外の主要先進国、G7の域には間違いなく達している(図表4)。IMFが2022年に発表した中期予測は、インドのGDPは今後、イギリス、フランスを完全に引き離し、2025年にドイツ、そして2027年には日本を追い越して世界第3位となるとしている。もちろん、その時点でも、人口1人当たりのGDPでいえば、インドは世界の下位にとどまっているだろう。つまりインド人が日本人より豊かになるというわけではない。けれども、「国力」としてみれば、近いうちに日本がインドに抜かれるのは間違いない。