星形のマークがついたロケットペンダント

他に、何らかの手がかりになる可能性があるとして、太田弁護士が保管していた遺品には次のものがある。

・星形のマークがついたロケットペンダント
・「田中」の印鑑1つと「沖宗」の印鑑2つ
・八坂神社(京都市)のキーホルダー
・阪神タイガースのロゴのキーホルダー
・「たなか たんくん」と書かれたキーホルダー
・セイコーの腕時計
・ビニール袋に包まれた韓国1000ウォン札
・米1セント硬貨
・ゆうちょ銀行と三井住友銀行の通帳
・茶色い装幀のアルバム
・アルバムに入っていない写真が約30枚

星形のマークのついたロケットペンダント。蓋の部分を開けると、内部には「141391 13487」と数字が記入されている
星形のマークのついたロケットペンダント。蓋の部分を開けると、内部には「141391 13487」と数字が記入されている(出所=『ある行旅死亡人の物語』)

ロケットペンダントは、開くと小さな紙が入っており、「141391 13487」と端正な字で書かれていた。北朝鮮とのつながりが連想されるきっかけとなった品である。

沖宗の印鑑のうち、1つは高級そうな革のケースに入っており、それほど使用していないのかきれいで真新しい。

銀行口座から消えた計500万円

通帳は三井住友銀行の方がNHK、大阪ガス、関西電力、NTTの引き落としがあるのみで、公共料金用だったとみられる。最後の引き落としは2020年4月27日で、女性の遺体が発見された翌日のこと。自動引き落としになっていたのだろう。

不可解なのはゆうちょ銀行の方である。最も古い2008年7月の繰越残高が500万266円。当初は時々、月に1〜3万円ほど引き出されていた程度だったが、2014年3月から数日おきのペースで、1回あたり10〜20万円が次々と引き出されていき、翌年6月には残高が202円となって履歴印字が終わっている。彼女自身が引き出したのだろうが、その500万円はどこへ行ったのか。金庫から見つかった現金の一部を構成しているのだろうか。

それにしても理由が推し量れない行動である。いくら彼女の生活が謎に包まれているとはいえ、現在のアパートの家賃は3万1500円。電気代など公共料金が別の通帳から落とされていたことを考えると、月に20万円も生活費に要したとは思えない。

さらに不可解だったのがアルバム外の写真で、アルバム内の写真と同じときに撮影したとおぼしき写真に加え、誰かわからない子どもの写真が2枚あった。

資料の確認を終えたときには、すでに日は暮れて外は薄暗くなっていた。大阪へ帰る電車に揺られながら、これからどうしようかと思案に暮れた。3日前に太田弁護士からZoomで聞いた話は、今日の作業で多くが裏付けられたのは間違いない。

もちろん、最初に調査に入った警察にも話を聞く必要があると思ったが、記者発表した事件でもないし、取材対応してくれるかどうかは望み薄だった。