現代人の集中力を削ぐ「スイッチング」
自分の意思とは関係なく、見ている画面がコロコロ変わり、何かひとつに集中しようとしても、情報の割り込みが入り、注意が別のものにいってしまう。このような行為をくり返し、ひとつのことに集中する時間が極端に短くなる状態を、心理学の世界では「スイッチング」と呼んでいます。
スイッチングをくり返し行っていると、注意力が散漫になり、集中力がどんどん短くなることがあきらかになっています。
このことは、じつはスマホが登場するずっと前から指摘されていました。
大きなきっかけは、1995年にWindows95という、容易にインターネットに接続できる機能を備えたパソコンOSが登場し、メールの着信などがリアルタイムで通知されるようになったことです。ほどなくして、パソコンで調べものやレポート作成をするアメリカの大学生のあいだで、本来やるべき作業を中断し、別のことを始めてしまうという現象が起こり始めました。
その後、2000年代にFacebook、TwitterなどのSNSが登場すると、情報の割り込みはさらに加速し、学生たちの集中力低下が問題視されるようになりました。
そこから、アメリカの大学生たちに対する観察研究が始まり、パソコンで宿題をしながらFacebookを使っている学生たちは、学業成績が下がり、睡眠障害やうつの症状が出やすいということも報告されています。
スマホを持つだけであらゆる能力がダダ下がりする
つまり、スイッチングによる悪影響はもう20年以上前から言われていることなのです。明確な悪影響が指摘されているにもかかわらず、デジタル機器は排除されず、よりコンパクトなスマホやタブレット端末に進化して、私たちの生活に浸透し、生活必需品として君臨してしまいました。
その結果、人の行動がどう変わったかといえば、スマホなどを持っているだけで、いろいろな能力がダダ下がりするようになりました。
じつは画面を見なくても、スマホを持っているだけで気が散り「成績が下がる」「集中できない」「読解力が落ちる」という心理学的なデータが明確にあります。
女性の場合はあまりないかもしれませんが、男性はよくスマホをズボンのポケットに入れておくことがあります。そうすると、着信が入っていないにもかかわらずブルブルっと震えたような感覚が起こる人がいます。これは、幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション症候群)と呼ばれていますが、そんな錯覚が起こるほど、スマホの通知に脳が過敏になっているのです。