なぜスマホで視聴する動画は、再生速度を変えられるようになっているのか。東北大学の川島隆太教授は「スマホには集中力を低下させるさまざまな仕組みが組み込まれている。倍速で動画を見る人は、等速で見られないほど集中力が失われている」という――。

※本稿は、川島隆太『スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

スマートフォンでアプリケーションによるライブストリーミングを見ている女性
写真=iStock.com/Worawee Meepian
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スマホはほどほどでやめられないようにつくられている

スマホなどのデジタル機器は、生活を補助する道具として長時間使いすぎないようコントロールして利用するならば、大きな問題は起こらないでしょう。しかし、なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとしで、やりすぎによってさまざまな弊害が起こるのです。

「じゃあ、ほどほどでやめればいいのね」と思うかもしれませんが、スマホやタブレットのやっかいなところは、ほどほどにできないようにつくられていることです。

たとえば、ちょっとスマホで調べものをしようと思ったとき、目的の検索が終わったらすぐにスマホの電源をオフにできますか?

検索している途中で、気になる動画や別の記事を見つける。そこにLINEのメッセージが飛び込んでくる。そうなると、新しい通知にどんどん気持ちが引き込まれていきませんか?

そしてあげくの果てには、最初に何を検索していたのかも忘れているでしょう。

利用しているようでスマホに「利用されている」

みなさんは、動画すら、真剣に1本ずっと見続けることができなくなっていることにお気づきでしょうか。YouTubeのような動画共有プラットフォームは、ひとつの動画を見ているあいだもワザと気が散るようにできています。

なぜなら、コロコロいろいろなところに飛んでもらったほうが、新しい広告がバンバン上がって、チャリンチャリンとお金が入るしくみになっているからです。要するに、ひとつの動画を長時間視聴されてもお金にならないので、気が散って依存しやすいように、みごとにつくられているというわけです。

スマホを見ている人は、その都度、自分の意思で情報を選択していると思っているかもしれません。しかし、じつは「中の人」に操られている状態なのです。