「パブロフの犬」と化したスマホ依存患者
なぜ人は、スマホの通知にここまで敏感に反応し、のめり込んでしまうのでしょうか。それは、LINEなどのインスタントメッセンジャーやSNSがコミュニケーションツールであり、人の気持ちを惹きつけやすく、麻薬的な中毒性、依存性が起こりやすいところに起因します。
LINEなどでやりとりされる文章は、非常に短く、ときに絵文字やスタンプのみという場合もあります。それゆえ、短時間に多くのやりとりがくり返され、通知が届く回数も多くなります。その行動を続けた結果「通知が来たら見る」という反射ができてしまうのです。
反射ができると、メッセージなどの内容にかかわらず、通知が来るだけで反応するようになります。やがて、通知が来ないときも「いつ来るかな?」と期待して集中力が散漫になります。
ロシアの生理学者、イワン・パブロフが、犬にエサを与える直前にブザーを聞かせることをくり返し行ったところ、やがて犬は音を聞いただけで唾液を垂らすようになったという実験の話を聞いたことがある人も多いと思います。
いわゆる「パブロフの犬」と呼ばれる「条件反射」の実験ですね。それと同じ反射のメカニズムが、みなさんの脳内にできてしまっているということです。
スマホの通知でもドーパミンが放出される
しかも、この反射は予測がはずれたときに、より強化される場合があります。たとえば、「どうせ広告の通知だろう」と思ってスマホを見たら、恋人や片思いの相手からのメッセージだったといった場合です。これは、非常にうれしいし、ドキドキするでしょう。
このように期待していなかったよいことが起こると、脳の深い部分にある報酬系回路が強く刺激され、ドーパミンが放出されます。
ドーパミンは快楽や幸福感をもたらす神経伝達物質です。人がイキイキと意欲的に生活するうえで欠かせないホルモンのひとつですが、大量放出によって依存症を引き起こす場合もあるのです。
たとえば、競馬やパチンコなどのギャンブルで大当たりを出すと、大量のドーパミンが放出され、快楽を感じます。そして、またこの喜びを味わいたいという気持ちから、どんどんギャンブルにハマりギャンブル依存症になるといった具合です。
ほかにもドーパミンを活発にする作用があるものとして、アルコールや薬物があげられます。そしてスマホも、これらと同じメカニズムで依存症を引き起こすのです。