意図的に雑談の機会を作るオフィス設計

グーグルは、社員同士が頻繁に雑談をして意見交換をする社風ですが、会社もそれに適した環境を整えるなど、様々な工夫をしています。

英語では、「create collisions」といいますが、「衝突を作る」とか「衝突の機会を作る」ようなオフィスの設計になっています。

日本企業のオフィスは働き方改革によって、ワンフロアのオープンオフィスでフリーアドレスが多くなっていますが、グーグルの場合は広いスペースや会議室がたくさんあり、それらが狭い通路でつながれています。

どこかに移動する際には、その通路を利用する必要がありますから、どうしても社員同士が顔を合わせる機会が増えるのです。

お互いに顔を合わせれば、「元気?」と挨拶したり、「そういえば、先日のアジェンダのことだけど、どう考えている?」といった雑談が始まります。

これはグーグルの日本のオフィスも同じですが、会社が意図的に雑談の機会を作り出しているのです。

ホールに立つビジネスの人々のグループ
写真=iStock.com/Caiaimage/Sam Edwards
※写真はイメージです

社員同士の「衝突を作る」という考え方は社員食堂にも反映されています。

グーグルには無料で美味しい食事ができる社員食堂がありますが、ひとりで座れるような席がありません。

日本企業の社員食堂のように、窓際のカウンターに座ってひとりで食事をするようなスペースはなく、長いテーブルを複数の人たちで使うようになっています。

社員同士が隣り合って座れば、「あれ? 何を話しているんですか?」と自然に雑談が始まります。

エンジニアが「会社のキャリア制度を調べたんだけど、よくわからないんだよね。みんなに聞いていたんだ」と言えば、隣に座った人事部の社員が、「それは、あのページに詳しく出ていますよ」と気軽に声をかけます。

社員がリラックスして食事をしながら、すぐに情報交換ができるような環境が整えられています。

2000人以上の部下の名前を覚えた人事のトップ

僕がグーグルに在籍していた時、人事担当上級副社長(バイス・プレジデント)として、人事のトップを務めていたのが、グーグルの人事制度の原則や理念を記して日本でも話題になった『ワーク・ルールズ!』を出版したラズロ・ボック氏です。

その当時、彼には世界中に2000人以上の部下がいましたが、そのすべての顔と名前を覚えていて、顔を合わせる機会があれば、誰に対しても気軽に声をかけていました。

「ピョートル、こんにちは! 元気ですか?」

僕は、アジアパシフィックの人材育成統括部長をしていましたから、名前と顔を知っていても驚くことはありませんが、入社1年目くらいの新人社員に対しても必ず名前を呼んで、気さくに雑談をしていたのです。

「ジョンさん、今日はシドニーから来たんですよね。疲れてないですか?」

誰がどこのオフィスに勤務していて、どんな仕事をしているのか、そのすべてが頭の中に入っているようでした。

いくら人事のトップでも、世界に2000人以上もいる部下の名前をすべて記憶している人は、彼以外にはいないと思います。

「あなた」や「きみ」ではなく、きちんと名前を呼んでから雑談をすることが、どんな印象を与えて、相手がどんな気持ちになるのかを十分に知り尽くしているのです。

グーグルの経営幹部は、社員とのコミュニケーションを非常に大事に考えています。