オウムが問題化した27年前にカルトを規制していれば…

横道誠(編)『信仰から解放されない子どもたち』(明石書店)
横道誠(編)『信仰から解放されない子どもたち』(明石書店)

2018年に麻原たちに死刑が執行されたとき、通勤電車のなかにいて、速報のニュースをスマホで見ました。いつかこの日が来るのはわかっていました、しかし現実に直面すると涙が出そうになりました。顔を上げて車内を見回したのを覚えています。このなかで彼らの死を悲しんでいるかたはどのくらいいるのだろうと。世間はテロリストたちの死刑執行を喜んでいる。その後に思ったのは、彼らの死を悲しむ己を隠さなくていけないということでした。その数秒間は、心のなかは嵐のようでした。

2022年7月の安倍さんの銃撃事件がほんとうにショックで、容疑者のかたの生い立ちを聞いたときに、崩れおちるような気持ちがしたんです。しかも同年代。オウムが騒ぎになった27年前に、もし国がカルトに対して動いてくれていたら、こんなことにはならなかったんじやないだろうかと。何しろショックで、何か私もできることがないだろうかと思って作ったのが、自分をオウムの2世として発信するSNSのアカウントなんです。オウムの2世の人は探してもなかなか見つからなくて、私がやっぱり発信しないと、人が寄ってきてくれないというか、見つからないんじゃないかと思って、勇気を出して作ったんです。

国が元信者や宗教2世の社会復帰を支援してほしい

教団について思うことは、世間から非難を受けていますけれども、内部で生きている人も生身の人間であって、彼らも社会に戻ることができないような人たちだということを、社会の人に伝えたいと思っています。支援があって、ある程度柔らかく受けとめてもらえないと、彼らは戻ることができない。いつまでもオウムの後継団体は存在しつづけるはずです。戻っていくところを作って、支援が国単位であれば、教団はなくなっていくんじゃないかと私は思っています。

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