土地、労働、資本の新たな組み合わせが求められている

しかし、だからこそいみじくもシュンペーター自身が資本主義を定義した時に使用した「イノベーション」の概念が重要になってくる。このイノベーションという言葉はシュンペーターが用いたことで有名なのだが、通常ビジネス的には「技術革新」などと訳されている。

革新という言葉から、古い技術や考え方を壊して、新しいものへと刷新するというスクラップ&ビルドのような印象があるが、シュンペーターの定義はそうではない。彼の主著『経済発展の理論』によれば、「資本主義経済においては、土地、労働、資本という生産要素の組み合わせで財やサービスを生み出す。この組み合わせのあり方を変化させることが新結合というイノベーションである」と言っている。

彼はこれを資本主義の経済発展をもたらすものとして使っているが、この「新結合」という考え方は、これからの我々のひとりひとりの生き方や「個人化する社会」における人とのつながりという面において、流用可能な考え方だと思う。

唯一の「居場所」ではなく、複数の「出場所」を増やす

何も昔のものをすべて破壊も否定もする必要はない。全く新しいものをゼロから発見、発明しなくてはいけないものでもない。すでに存在するものを従来の概念とは違った視点でとらえなおし、本来組み合わせるものではないものを組み合わせてみたり、何かを付加することで、より良いものへと新結合していくという考え方である。グレードアップでもアップデートでもなく、シュンペーターの言葉通り「新結合」である。

荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)
荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)

世界的な少子化や人口減少は不可避である。しかし、それは絶望の未来ではない。「社会の個人化=ソロ社会化」が進むからといって、個人がバラバラに生きる社会になるわけではない。人とのつながりは「所属するコミュニティ」だけではない。

所属から「接続するコミュニティ」へ。唯一の「居場所」だけに依存するのではなく、複数の選択できる「出場所」の充実へ。我々の周りの外敵環境そのもの構造変化が待ったなしの未来に向けて、どう適応していくべきか? そろそろ一人一人が考え、動き出す時が来ているのである。

「できもしないことをさもできるかのように言う」政治家もいるが、台風が来るとわかっているのにその準備をしないまま見過ごすことの方が絶望の未来への道だろう。

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