「子育て支援」をしても子どもは増えない

政府は少子化対策と称して、「子育て支援の充実」を声高に叫ぶが、残念ながら、子育て支援は少子化対策にはならない。今までも徹底して子育て支援の政策メインにやってきたが、出生数は右肩下がりであることが何よりの証拠である。

何も子育て支援に反対や否定をしているのではない。むしろ、子育て支援は少子化があろうとなかろうと常時やるべきものであり、未来を担う子どもたちに投資をするのは当然だ。しかし、子育て支援をどんなに充実化させても、出生数を増やすことは物理的に無理なのである。

現在の母親が決して子どもを出産していないわけではない。今でも結婚した夫婦は2人以上の子どもを産んでいる。一人の母親が産む子どもの数の比率は1980年代とほぼ変わっていないし、むしろ3人以上の出産の比率は、第二次ベビーブーム期の1970年代より多いくらいだ。私が「少子化ではなく少母化だ」と繰り返し言っているのはそのことである。

出生数が減るのは、子を産む対象である49歳以下の女性の絶対人口が減っているからで、その直接の原因は、1990年代後半に来るはずだった「消えた第三次ベビーブーム」による。ただでさえ未婚化で結婚する女性の数が減っているのに加えて、絶対人口そのものが減っているのだから、どう逆立ちしても出生数が増えるはずがないのである。

未婚化、少母化、高齢者の多死化は止められない

少子化による人口減少の危機が叫ばれるが、そもそも日本の総人口自体がすでに減少しはじめており、その大きな要因は少子化よりも高齢者の多死化によるものでもある。

長寿国家日本では、昭和~平成にかけて、世界でも稀に見る死亡率の低い「少死国家」であった。とはいえ、不老不死ではないわけで、いつかは天寿を全うする。

こちらも、社人研の推計によれば、今まで長生きしてきた高齢者たちが毎年150万人以上50年連続で死んでいく多死時代に突入する。日本の出生は今後も最大で年間約80万人程度だとするなら、生まれてくる数の倍の死亡者がいることになる。人口が減るのは当然なのだ。実際、2100年には日本の人口は今の半分に減るだろう。

未婚化、少母化、高齢者の多死化という3つの要素によって「ソロ社会」は不可避な現実となる。これは、子どもの数の減少であるとともに、家族の数の減少にもなる。婚姻減、出生減なのだから当然の帰結だ。単身世帯が増え、独身が増える。まさに社会の個人化である。

この流れは止められない。政府の政策でなんとかなるものでもない。我々の価値観や意志によって変えられるものですらない。これはある意味では「パンデミック」と言えるかもしれない。2020年春に、瞬く間に全世界に感染爆発したコロナウイルスとは違い、長い世代時間をかけて、徐々に広がっていく。「ソロ・パンデミック」というものかもしれない。