せっかく放送法をめぐる成果を上げたのに…
今回小西氏の発言が注目されたのは、小西氏が3月、放送法の「政治的公平」の解釈をめぐり、解釈変更に至る経過を記した総務省の行政文書の存在を、国会で明らかにした当事者だったからだ。
3月3日の参院予算委員会で文書について質問した小西氏に対し
小西氏が提示した文書について、やがて総務省自身が本物と認めた。追い込まれた高市氏はなおも「内容が不正確」などとして「捏造」発言を撤回してはないが、国会での質疑を経て「本筋」の方は確実に動いた。
小西氏の質問に対し総務省側は「一つの番組ではなく(その放送局の)番組全体を見て判断する」と答弁。かつて高市氏が「一つの番組でも極端な場合政治的公平を確保しているとは認められない」と答弁した「政治的公平」をめぐる解釈変更を、事実上撤回して元に戻した、と言っていい(本来は松本剛明現総務相ら政治家がきちんと「撤回」と答弁すべきだろう)。
気に入らない番組に対し、政府が放送局の停波までちらつかせて恫喝し、自らへの批判を封じようとする根拠が、事実上取り除かれたわけだ。今国会における野党側の最大の成果だと思う。
せっかくの功績に自ら泥を塗った
しかし、である。その最大の「功労者」である小西氏自身が、自ら気に入らない報道に対し、一種の「脅し」と受け取れるような発言をしてはいけない。せっかくの功績に自ら泥を塗ることになりかねないからだ。
念のため指摘しておきたいが、権力を持つ政権与党側の高市氏が、かつて放送局に停波をちらつかせる発言を国会で行い政治的圧力をかけようとしたことと、野党議員の小西氏が、放送業界が自主的に設立した機関であるBPO(放送倫理・番組向上機構)に訴える仕組みを紹介したことを、同列に論じてはいけない。
BPOには放送番組の人権侵害や政治的公平の欠如などに対し、誰でも意見を申し立てることができる。そうした行動を萎縮させ、政治権力を持つ側に都合の良い環境を作ってしまう恐れがあるからだ(この点について、メディアの報じ方はあまりにも雑で、筆者はむしろその方を危惧している)。