「次の政権与党の一員になる」という想像力が足りない
しかし、だからと言って「元総務省放送政策課課長補佐」という経歴にわざわざ触れて「いい度胸だ」などという「喧嘩を売る時の定番フレーズ」を使うのが、良いことだとは全く思わない。小西氏は単に「自分はBPOの仕組みに詳しい」ことを誇示するために経歴を挙げたつもりなのかもしれないが、こういう発言を国民は「肩書を使って権力を振りかざすようになるのではないか」と受け取るかもしれない。小西氏にはそういうことへの想像力が足りない。
小選挙区制の下における野党第1党とは「次の衆院選後に政権政党になる可能性がある」という建前で存在している政党である。政党や所属議員の振る舞いに政権与党並みに厳しい批判が寄せられるのは、彼らが「次の政権政党候補」という重い役割を背負っているからだ。
「小西氏も政権与党の一員になったら、高市氏のような権力行使をするようになるのではないか」などと思われるのは、本人にとっても本意ではないだろう。小西氏には今後も、萎縮することなく権力監視に十分な力を注ぐことを望んでいるが、同時に自らの言動が「未来の政権政党」を支える政治家としてふさわしいかどうか、今回の問題を機に、一度冷静になって考えてほしい。
高市氏の「質問するな」発言も十分にひどかった
ただ、ここで一言書き添えておきたいことがある。
小西氏が総務省の行政文書を入手して以降の一連の流れのなかで登場したさまざまな発言のなかで、筆者が最も衝撃を受けたのは、高市氏が3月15日の参院予算委員会で、立憲民主党の杉尾秀哉氏から「捏造」の根拠について説明を求められた際に「信用できないんだったら、もう質問なさらないでください」と述べたことだ。
国民の代表である国会に審議を「お願いする」立場であり、少々嫌な質問にも真摯に答えることが求められている政府側の人間が、質問者の側に「もう質問するな」と言い放つ。これはひどすぎる。さすがに、同じ自民党の末松信介委員長からも異例の注意を受け、高市氏は5日もたってから発言を撤回したが、結局謝罪はしなかった。
思わず頭をよぎったのが、吉田茂首相の「バカヤロー解散」だった。野党議員の質問に激昂した吉田氏が、思わず「バカヤロー」と吐き捨てたのを機に、内閣不信任決議案が可決され、衆院解散に至った問題である。
内閣が国会議員の質問を侮辱するとは、本来はこれだけの政治的影響をもたらすものであるはずだ。ましてや高市氏の発言は、侮辱を通り越して、国会議員の質問そのものを直接的に封じようとしているわけで、到底許されるものではない。