欧米ではPBのシェア率はもっと高い
ビールは食品の中でもとりわけ消費者が味にうるさい商品だと思いますが、アサヒスーパードライの350ml缶が179円、一番搾りの同サイズが189円のところトップバリュのプレミアム生ビールは168円とやはりPB商品はお安い。パッケージを見るとサッポロビールが作っているので品質は心配なさそうです。
食品という分野は実は他の消費財と違って消費者のスイッチが起きにくい分野です。日用品なら100均で大丈夫だけど、食品はやっぱりいつも使っている有名ブランドがいいという消費者が多いのです。そのような分野で長年「日本のPB商品の比率は10%程度」と言われてきたものが15%前後まで増えてきた。これはひとつの異変なのです。
ちなみに欧米ではPB商品のシェアがもっと高いことから、日本もこの先はそのような世界にたどり着くのではないかというのが私の予測です。日本同様にナショナルブランドが強いアメリカでは、スーパーマーケット大手のクローガーではPBのシェアが26%です。ヨーロッパの主要国ではさらにPBのシェアが高い状況にあります。
背景事情としては日本よりもインフレ率が高く、かつ日本よりも貧富の格差が激しいということが挙げられます。この先の日本は欧米に似た格差社会になりそうだというのが私の予測の根拠です。
トップバリュは「ユニクロ化」する
さて、ここからが今回の記事の本題です。どうもPB商品市場に第二の異変が起きているようなのです。ちょっと説明しづらいのですが先に結論を言うと「トップバリュのユニクロ化が始まっている」という話です。
ユニクロについて20年前の日本人は「安くて恥ずかしい服だ」と感じる人が正直多かったのですが、現在では「品質もデザインもいいから買う。価格は昔ほどは安くないけどね」というようにそのブランドイメージが大きく変わっています。
今のトップバリュはその観点で言えば20年前のユニクロとブランドイメージが近いかもしれません。値上げラッシュでトップバリュを買う人がこの1年で増えたのですが、「安いけど買っているのを知り合いに見られると恥ずかしい商品だ」と捉えている消費者はまだ多いのです。
ただ思い出していただきたいのですが、20年前のユニクロも品質もデザインも良かったのです。でも安いから消費者はそれを恥ずかしいと感じていた。特に服というものはマヨネーズと違って着ていればどのブランドなのか他人から一目瞭然でわかります。ユニバレという言葉が生まれたぐらいで、ユニクロを着ていることがばれるのが恥ずかしいという消費者が昔は確かに存在したのです。
要するにこの20年でユニクロのブランドイメージは向上しました。いろいろな手を打ってきたわけですが、たとえばクリストフ・ルメールやジル・サンダー、イネス・ド・ラ・フレサンジュといったトップランクのデザイナーコラボ商品展開はユニクロの価値を大きく引き上げたと思います。