日本各地から選ばれたロケーションへの強いこだわり

アリス(山﨑賢人)が高校時代からの親友カルベ(町田啓太)、チョータ(森永悠希)とふらついていたら、気づけば渋谷のスクランブル交差点が無人と化す。作品を象徴するこのシーンは、実は栃木県足利市にある足利スクランブルシティスタジオで再現されたセットで撮影され、大きな話題にもなった。

渋谷をはじめ東京が舞台の作品だが、シーンごとに没入感を生み出すために日本各地で選ばれたロケーションのこだわりは強い。日本各地にあるフィルム・コミッションと呼ばれる制作支援する自治体の協力によって作品が実現しているのだ。これが『今際の国のアリス』のスケール感のある映像表現につながったとも言える。

撮影地の詳細が紹介された「今際の国のアリス・日本ロケーションマップ」というものまで作られている。主に海外の制作スタジオに向けた撮影誘致が目的にある。香港で3月中旬に開催された国際番組マーケット「香港フィルマート」の現地会場で配布されたそれを実際に手にし、中身をみると計14の地域で29カ所のロケーションが明かされていた。

200個のコンテナを並べた圧巻の映像が生まれた

例えば、シーズン2でキューマ(山下智久)率いるクラブのキングのゲーム会場「すうとり」は、兵庫県神戸市にある「ポートアイランド」が撮影場所に選ばれたことがわかる。協力した神戸フィルムオフィスの話によると、真夏の暑い時期に1カ月間にわたって撮影が行われたという。

通常は船舶が入港したあと、貨物を積卸するバースと呼ばれる港内の場所にコンテナが詰まれている。だが、長期間にわたってそこで撮影するとなると難しい。そこで神戸フィルムオフィスは「ポートアイランド」を撮影場所に提供する。400ヘクタールもの土地があるため、港に近い空き地でセットを組むことができ、実際に200個のコンテナを並べた圧巻の映像が生まれた。

『今際の国のアリス』
写真提供=Netflix

またシーズン2冒頭の手に汗握るカーチェイスシーンは、なごや・ロケーション・ナビの協力によって名古屋市の「南大津通」で実現し、土屋太鳳のアクションシーンが見どころにある「ちぇっくめいと」のゲーム会場は北九州フィルム・コミッションの協力でバイオマス燃料を使用する最先端の「響灘火力発電所」で撮影が敢行された。他にも大阪、奈良、和歌山、富山、静岡、群馬、埼玉、神奈川、千葉、東京といった場所で印象的なシーンの数々が作り出された。