「目標とする人が理想としたこと」を目指すべき

8カ月という短い間でしたが、汎子ママから“クラブのママのあるべき姿”を学んだ後、諸事情あって『くらぶ宮田』に戻った私は、19歳で名門クラブの“ナンバーワン”のホステスになれ、4年後の23歳のときに『クラブ由美』を開いてオーナーママになりました。そしてそこから40年間、汎子ママの教えを胸に、全力で自分の店を守ってきました。

今でもときどき思うことがあります。私は汎子ママの背中に追いつけたのだろうか。その背中を超えられたのだろうか、と。ママこそ天職――私がそう考えるに至った背景にはやはり、クラブのママとしての矜持を厳しくやさしく教えてくださった汎子ママの存在があるのです。

最近、お店に入った「由美ママに憧れて、由美ママのような銀座のママになりたい」という20歳の女の子がいます。まだまだホステスとしても未熟なのですが、夢への強い思いは昔の私を見ているようでもあります。汎子ママの背中から学んだ私が、今度は自分の仕事への姿勢で若い子に学びを与える番になっている。今はその嬉しさと、責任の重さとを同時に感じているのです。

俳人の松尾芭蕉が門人に贈った「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」という言葉があります。「偉大な先人のやり方を真似るだけではなく、その先人が何を理想としていたのか、何を目指していたのかを理解し、見極め、そこに向かう努力をしなさい」という意味だそうです。

みなさんも仕事や人生で「目標とする憧れの人」をぜひ見つけてください。そしてその人のスキルやテクニックだけでなく、仕事に対する姿勢や意識などもを大いに学んでください。その学びはきっと成功を後押ししてくれるはずです。

たかが10分、されど10分

待ち合わせに必ず遅れてくる人、みなさんの周りにいませんか。もちろん、やむを得ない理由や情状酌量の余地がある事情の場合なら仕方ありません。でも世の中には「遅れることがクセになっている」「遅れてもかまわない」、さらに「遅れて登場したほうがカッコいい」など、社会人としての資質を疑うような人もいるので困ってしまいます。

約束の時間を守る。時間どおりに来る。むしろ約束の時間よりも早めに到着している。そうした行動は仕事の成功とか夢の実現以前に、社会人として当たり前のことです。「たかだか5分や10分、いいじゃないか」――彼らはそう言うかもしれません。確かに10分くらい遅れたところで命まで取られるなどということはほぼないはず。待たされた側もその程度なら声高に責めることもしないでしょう。

オフィスでコーヒーブレイクをしながら腕時計を見ているビジネスウーマンのクローズアップ。
写真=iStock.com/Drazen Zigic
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でも、事の本質はそこではありません。なぜなら時間は有限だからです。どんな境遇であろうとどんな環境にいようと、すべての人にとって1日は24時間しかありません。こればかりはどれだけお金があろうと、自分の都合で増やしたり減らしたりすることができません。