新富裕層が考える「お金を減らす」楽しみ
お金を運用してもっと増やしたい、税金はビタ一文払いたくないので節税に励む、そしていかに税金を取られずに自分のお金を子孫に相続するか、そういうことばかりに関心がいくというのは、どことなく精神が貧しいような気がしてなりません。
もちろん新富裕層が興味を持つ事柄だって、いずれも投資に関連するものではあります。でも彼らの方がスマートに感じられるのは、彼らの関心事が、投資を通じて世の中をよくしようとすることにあるという印象があるからでしょう。
新しい富裕層の多くが起業で成功した人たちですが、彼らは自分が創業した時に、銀行などからなかなかお金を融資してもらえずに苦労をした、あるいは思いがけないところから支援を受けたりした、といった経験から、次の世代へ資金援助をしたり、教育に高い関心を持ったりするのだろうと思います。
これもまた「お金を減らす」ことの楽しみといっていいのではないでしょうか
“天引き消費”という発想
作家の森博嗣さんの近著に『お金の減らし方』(SB新書)という本があります。その中で彼は、「どんなに貧乏なときでも、僕は収入の1割を、自分の趣味のために使った」と書いています。そして奥さんにも「渡したお金の1割を遊ぶために使いなさい」と言って、それを実践していたそうなので、収入の2割はあらかじめ遊ぶために取っておいて、残りの8割で生活をしていたということになります。
最初から給料の1割とか2割を天引きで貯蓄しなさいというのは、資産形成の第一歩で、どんな本を読んでも「天引き貯蓄が王道である」と書いていますが、森さんのやり方は、いわば“天引き消費”でしょう。いったいどうしてそんなことをするのかと聞いてみたくなりますが、おそらくそれを森さんに聞いたら、「どうしてそんなことを聞くの?」と返されるような気がします。森さんは「好きなことをやるために、生きている」そして「人生の目標は自己満足である」と言います。