子どもが家庭と集団生活の行動を分けていることも

とにかく、まずはゆったりと構えて最後まで先生の話を聞いてみてください。園や学校の先生は、あなたの知らない子どもの姿を毎日見ています。個人面談は「学校と家庭、それぞれにおける子どもの情報を共有する大切な場」。限られた時間の中で、教師の立場から「気になっていること」を伝えてくれているのです。

人によっては言い方がきつい先生もいるかもしれません。ただ、その言い回しに左右されるのはもったいない。先生たちは決してその子を罵倒したり、否定したりしたいわけではありません。子どもの問題を一緒に考え、子どもによくなってほしいから勇気をもって伝えているのです。それらを踏まえて、敬意をもって先生の言葉を受け止められるといいですね。

子どもは小さいながらも家と集団生活の場で行動を分けています。園や学校では、家の中の子どもとは違う行動をしていることも多々あるのです。

教室で粘土で遊んでいる子どもたち
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たとえば、私の診ているお子さんで、おうちでは大変聞き分けのよい「いわゆるいい子」である小学校2年生の男の子がいました。お母さんは学校での様子を毎日その子から聞いていて、「ぼくはみんなと仲良くしている。クラスに暴れん坊がいるけれど、ぼくがその子を止めているんだ」と言われていたので、安心していたのです。しかし、突然先生から学校に呼ばれて、お子さんは発達障害かもしれませんと言われました。お母さんは驚いてにわかには信じがたい気持ちになったそうです。

先生からの情報は受け止めるべき貴重な証言

先生から様子を聞くと、「授業や団体行動のときに、ちょっとしたことで怒りが抑えられず、お友だちとけんかになります。体格がよいのでクラスで暴れるとみんな怖がってしまいます」など、クラスメートとうまくコミュニケーションがとれず、みんなに怖がられていることがわかったのです。その子はお母さんが大好きで、お母さんには自分の様子を他の子がしていたかのように報告していたようです。

こんな事例もあります。この場合、学校での子どもの行動は、先生から教えてもらえなければ、親は一生知りえないものでした。このような「親がまったく知らない子どもの情報」を教えてくれる貴重な人が、学校や園の先生なのです。こう考えると、先生が子どもについて話してくれたとき、たとえその内容が多少ネガティブなものだったとしても「うちの子のことを気にかけてくれてありがとうございます」と、受け止められるのではないでしょうか。

まわりと比べてお子さんの成長が遅く、そのせいで周囲からさまざまなことを言われている親御さんは、自分の子育てに不安を持つことが少なくありません。そのこと自体は仕方がないことだと思うのですが、問題なのはその不安の裏返しで、攻撃的な態度をとってしまうことです。