3月8日に野球の国際大会WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開幕する。スポーツライターの広尾晃さんは「日本代表には複数の弱点があり、過去最高のレベルとなる今大会で優勝するのはかなり難しいのではないか」という――。
2023年1月6日、ワールド・ベースボール・クラシック大会に向けた記者会見で握手するロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手(左)と野球日本代表の栗山英樹監督
写真=AFP/時事通信フォト
2023年1月6日、ワールド・ベースボール・クラシック大会に向けた記者会見で握手するロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手(左)と野球日本代表の栗山英樹監督

ベストメンバー=「WBC優勝」にはならない

第5回WBCは、開幕前から連日、メディアで大きなニュースとして取り上げられている。前景気は上々だ。

今年の日本代表、侍ジャパンは「史上最強」といわれている。ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)とMLBでもトップクラスのメジャーリーガーが参戦しているうえに、令和初の三冠王の村上宗隆(ヤクルト)、同じく令和初のパーフェクト投手の佐々木朗希(ロッテ)、2年連続沢村賞の山本由伸(オリックス)、パの本塁打王の山川穂高(西武)と、投打で屈指の実績がある選手が参戦しているからだ。

これまではさまざまな事情で、参加できないトップ選手がいたが、MLBでも期待株のラーズ・ヌートバー(カーディナルス)も参加。今、日本でそろえることができるベストメンバーになったといえるだろう。2017年以来、6年ぶりのWBCは「満を持して、世界一奪還」と、チームもファンも思うのは当然だとは思う。

しかしながら筆者は全く楽観していない。これまでの大会とチームの陣容が違うのは、日本だけではないからだ。

メジャーリーグのスーパースターが参戦

最大のポイントは「MLBがWBCへの選手参加のハードルを下げたこと」だ。前回大会までもスター選手が何人かは参加していたが、特に投手は肩肘の故障を恐れてなかなか参加を認めなかった。

MLBのトップクラスの投手は、日本円で複数年計100億円前後の超大型契約を結んでいる。いわば球団の資産だ。その資産が、ペナントレースとは関係のない国際大会でケガすることがあっては困る、とオーナーたちは考えていたのだ。

しかし6年間のブランクを経た今年は、マイク・トラウトなどMLBを代表するスター選手がWBC出場に意欲を見せ、経営者もコロナ禍で観客数が激減する中、新たな市場開拓へ向けて前向きになったのだ。

だから日本にダルビッシュ有、大谷翔平の参加が許されたように、アメリカにはMVP3回のマイク・トラウト(エンゼルス)、昨年ナ・リーグMVPのポール・ゴールドシュミット(カーディナルス)、15勝投手のローガン・ウェブ、ワールドシリーズで優勝したアストロズのクローザーのライアン・プレスリーなど投打の一線級が参加する。