台湾の崎陽軒では、熱々のシウマイ弁当を提供している

果物に限らず、食についての勘違いは本当によく起こります。

台湾では中食なかしょく文化が発達しており、テイクアウトを利用する人がたくさんいます。

台湾の中食が日本のものと明らかに異なるのは、どの店も熱々の食べ物を提供している点です。その違いは、台湾の鉄道駅で売られている駅弁を見るとよくわかります。

冷めた食べ物はおいしくないと考える人が多いため、台湾の駅弁は熱々のヒーターの上で温められたものが販売されているのです。駅弁を買い求めた人の中には、食べ物が冷めてしまうのを嫌い、買ってすぐに待合室で食べ始めてしまう人もいます。

駅弁についてさらに言うと、2020年にシウマイで有名な崎陽軒が台湾のセントラルステーションである台北駅に海外1号店を出店したことが話題になりました。

崎陽軒にとって新たな試みとなったのは、セイロに入った熱々のシウマイをその場でお弁当に詰めて提供することでした。事前の調査により、崎陽軒は「日本のように冷たいままのシウマイ弁当では台湾では絶対に売れない」とわかっていたのです。

「作り置いたものや冷めたものは貧しい人の食べ物……」

台湾人が心のどこかに抱く感覚に気配りができた崎陽軒は、シウマイ弁当の好調な売れ行きを見事、実現することができました。

セブンイレブンでは、「韓国風カニミソ味」のおにぎりが人気

一方、セブン‐イレブンが台湾に進出したときは、苦戦を強いられました。セブン‐イレブンの売れ筋である「おにぎり」がまったく売れなかったのです。作り置きの冷めたおにぎりはなかなか受け入れられず、浸透するまでにかなり時間がかかりました。

結果としては、以前から日本のドラマやアニメに頻繁に登場するおにぎりに興味を持つ人が買い求めたことで、徐々に受け入れられていきます。

その後、コンビニ総菜も台湾の人たちの生活のなかにすっかりと溶け込み、現地の味覚や習慣に合わせたオリジナルのおにぎりやおでん(関東煮)、ちまきなどが次々と開発されるようになりました。最近では、韓国風カニミソ味のおにぎりが人気のようです。

屋台やデパートの催事場で食べ物を販売する際にも、台湾独特の売り方があります。これらの場所で食品販売をするなら、試食サービスがつきものなのです。試食ができない食品には、誰も興味を持ってくれません。