354万世帯が年収の98%を借金返済に充てている
統計データは違いますが、もう少し分かりやすくまとめてある記事(「ハンギョレ新聞」/2022年5月9日)もあります。韓国金融研究院という機関が、韓国の赤字世帯354万世帯について調べた結果についての記事です。ここでいう「赤字世帯」というのは、実際の生活で赤字になるという意味ではなく、「本当に必要な消費だけをしても、所得が足りない」という意味になります。
総世帯数が2050万世帯ですから、数で見ても結構多いですが、さらに気になるのは、彼ら354万世帯の平均年間所得が、4600万ウォンであることです。繰り返しになりますが、これは生活において使わなければならないもの、たとえば税金とか、最低限の生活費とか、そして借金の返済を考えての「赤字」ですので、年4600万ウォンだと、赤字生活は十分回避できるはずなのに、どうしてなのか。
それは、家計債務の返済に苦しんでいるからです。彼ら354万世帯の年間平均元利金返済額は4500万ウォン。先の平均4600万ウォンで考えると、年間所得の98%が借金の返済で飛んでいくわけです。記事は、「借金が、赤字の最大の原因になっている」「金融負債の規模が所得に比べ大きすぎることが、家計の赤字に影響を及ぼしている」と述べています。実際、金融負債が所得の5倍を超える世帯も68万世帯確認された、とも。
米国の「サブプライムローン事態」前夜
まだ私が韓国で歯科医師だった頃、米国で「サブプライムローン事態」が問題視されるようになって、それでもまだ目に見えるほどの被害が起きる前の頃だと記憶しています。米国の「一般人」たちが住宅関連で大騒ぎだという趣旨のテレビ番組で、米国のある人が、30代ぐらいに見えましたが、自宅の壁を自分で増築しながら、こんな趣旨を話しました。
「こちらの壁を○ぐらい増築すると、ぼくの家の評価価格は○ドル上がるんだ。あと、あそこの車庫を○だけ増築すると、○ドル上がるんだよ」
その人は、満面の笑みを浮かべていました。家の○○を○○にすれば、○ぐらい価格が上がる、まるで「規格化された通貨システム」もどきのようになった、そんな感じでした。
家の構造などで価格上昇の原因になる何かの要素があるという側面まで否定するつもりはありませんが、さすがにこれはどうかな、と。言い方は悪いけど、素人さ丸出しの人がいじりまくった家を、高い価格で買いたいとは思えませんでした。本当は何の知識も腕もない人たちが、適当な情報に踊らされているだけではないのか、そんな気もしました。