またアントニー・ブリンケン国務長官も2月18日、ドイツのミュンヘンで中国の王毅国務委員兼外相と会談した際、中国がロシアに対して物的な支援をしないように要請した模様である。

中国の軍需企業がロシアに軍用品を輸出したように、一部の中国の国営企業がロシアに物資を支援していることを米国は問題視している。

確かに中国とトルコは、ロシアに対する輸出を増やしている。とはいえ、それは基本的に経済的な原理に基づくものであり、政治的な動機に基づくものでは必ずしもないだろう。結果的にそうした輸出が、ロシアの経済活動をサポートしているわけだが、ロシアが需要を増やしているモノを、中国とトルコが供給しているに過ぎない。

トルコにとってはウクライナも重要なパートナー

中国とトルコはロシアと友好関係を維持しており、ロシアに対する経済・金融制裁に参加していない。そのため、ロシアとの間の貿易が制限されているわけではない。経済的に成立する貿易取引なら、それを行うことは自然の道理だ。

そうはいっても、両国がロシアと協力し、ウクライナや欧米日と対立する意図はないだろう。とりわけトルコの場合、ウクライナもまた重要な通商パートナーである。

トルコはウクライナに対して軍需品などの製品を輸出し、またウクライナもトルコに対して穀物といった食品を輸出してきた。トルコは国連と共にロシアとウクライナの停戦に向けた呼びかけを行っており、決してウクライナと対立を深めようとはしていない。

ロシアは友好国に足元を見られている

以上、ロシアにとっての輸入の観点から、中国とトルコの対ロ貿易を簡単に分析してみた。

しかしながら、中国とトルコの視点に立てば、対ロ貿易の主役はあくまで輸入であり、2022年の対ロ貿易は両国とも過去最高の赤字を計上した。輸入の中心は、両国とも化石燃料、すなわち石油製品に他ならない。

油井
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ロシア産原油の価格は国際指標であるブレント原油の価格に比べると15~20ドル程度安い状況が続いている。こうした安値の原油やそれを精製した石油製品を、中国やトルコは積極的に輸入した結果、両国の対ロ輸入額はそれぞれ過去最高を更新したわけだ。それに比べれば、両国のロシア向け輸出額の増加は限定的な規模に過ぎない。

つまるところ、ロシアは中国・トルコに安値で売った原油・石油製品で外貨を稼ぎ、その外貨で中国やトルコからモノを輸入していることになる。

この貿易取引は中国やトルコにとってうまみのある取引であろう。今後も、欧米の経済・金融規制が続くため、こうしたロシアにとって不利な取引も続くことになる。

この状況にどこまで耐えうるかはロシア経済の体力次第である。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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