1997年に発売された『ファイナルファンタジーVII』は、世界中で1000万本以上のメガヒットとなり、いまでもシリーズで最も売れたタイトルとなっている。文芸評論家の藤田直哉さんは「主人公たちは独裁的な巨大企業に戦いを挑むテロリストとして描かれている。作品内では『敵』への一方的な暴力の是非が問われており、そのテーマの深さが長く愛される理由となったのではないか」という――。

※本稿は、藤田直哉『ゲームが教える世界の論点』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

『ファイナルファンタジーVII リメイク』公式サイトキャプチャ
画像=『ファイナルファンタジーVII リメイク』公式サイト

シリーズで最も売れた『FF7』の主人公は「テロリスト」

※本原稿は、IGN JAPAN(https://jp.ign.com/)で連載していた内容をもとに加筆修正されたものです。

『ファイナルファンタジー』シリーズは日本を代表するRPGで、1997年に発売された『VII』は国内だけで400万本、全世界で1000万本以上を売り上げ、国際的にも評価が高い。

内容は、一言で言えば、環境テロリストの話である。神羅電気動力株式会社、通称・神羅カンパニー(Shinra Electric Power Company)が、政治・経済的な権力を握っている独裁的な世界が舞台であり、主人公たちはそこに戦いを挑むテロリストだ。ゲーム開始直後に、主人公たちは魔晄炉まこうろと呼ばれる発電所のような場所を爆破する。

つまり、ほとんど原子力産業や工業社会に抵抗するテロリストの話なのである。魔晄を掘り出し、魔晄炉という発電所のようなところでエネルギーに変え、非常に栄えているミッドガルという都市。そこに君臨する神羅カンパニーは露骨に、「中央」なり「資本主義」なりの象徴である。

主人公クラウドが加担することになるアバランチという組織は、「星命学」という思想を信じている。これは、要するに地球を守るために科学技術を排除しようという思想と、死んだ魂が大地に戻るというスピリチュアル的な考え方が混ざったようなものである。過剰に工業と資本を誇張して描かれるミッドガルに対して、アバランチは素朴な自然・霊性のようなものを擁護する勢力だとみなせる。

ヒロインのエアリスは、無邪気な女性で、植物を育てている「古代種」だ。文明や科学や技術が進展することで失われた、無垢むくさ、無邪気さ、自然や優美さの象徴だろう。オリジナルの『VII』では作品の中盤で彼女が殺されてしまう。

「ファンタジー」が意味すること

つまり、作品の基調となるのは、科学や技術、利益追求に邁進する世界のなかで失われる「自然」を求める、ロマン主義である。『ファイナルファンタジー』というタイトルなのに、描かれるのは工業的な世界だが、本作におけるファンタジーとは、このような機械的なものによって失われる「自然」的な感覚のことを指すのだと解釈できるだろう。

第2次世界大戦後、科学技術立国になって失われていったアニミズム的な心性の象徴だと考えることもできる。