つながって、つながって、つながっていく

――カタカナを使っちゃいますけど、外部の人を連れて来たり、ITリテラシーを渡すことによって、地元の人たちにマネタイズとプロモーションの方法を渡す、と。

三井 そうです。考えていることは、そういうことです。こうやって、なんかいろんなことがつながって、つながって、つながっていくんですよ。ぼくが広田で始めていることは、一次産品を売ることに繋げるだけでなく、広田のコミュニティの役に立つという目的もあるんです。今、広田は、自宅がなくなった人たちが暮らす仮設と、自宅が残った在宅の人たちとの間でコミュニティが分かれちゃっているんです。なのに、パソコン教室を「この仮設限定」とかで、しかも無料でやっちゃうんですよ。うちはそうじゃなくて、「在宅の人でも仮設の人でも関係ありませんよ。みんな一律2000円です」ってやっているんです。そうすることによって仮設の人も在宅の人も来て、そこでパソコンという一個のキーワードを元に、教室がコミュニティのひとつになっているわけです。

町の公式ホームページも、ふつうはホームページって外部への発信というイメージが強いと思うんですけれど、ぼくが狙っているのは広田町内部の情報シェアなんです。広田町では今、回覧板でしか町の情報を回していないんです。そうすると、共働きしている家には回覧板が回ってこなくて、町の行事がわからなくなっちゃう。そこをホームページで見れるようにしましょうよ、と。

パソコン教室をやることで、それを後押ししてくれる人も増えます。後押しするのは誰かというと、町のお母さんたちなんですよ。だから、このパソコン教室のメインターゲットはお母さんたちなんです。いちばんパソコンが弱いけど、町でいちばんクチコミ力があって、いちばん裏方のパワーを持っている人たち。お父さんたちの紐を握っている人たち。お母ちゃんたちを口説けたら、強いんですよ、この辺りでは。

――そこを発見したのはいつ頃、何によって?

三井 お父さんたちとの会話の中で見つけたんです。お父さんたちとの会話の中に「うちのお母ちゃんが」ってのが多いなと思ったところからです。「いやあ、うちのお母ちゃんこういうからアレなんだなあ」みたいな話をよく聞くんですよ。これ、一回来ただけじゃわかんないですね。

――そう話してもらえると、具体的によくわかります。私はさっきカタカナにして、マネタイズとかプロモーションとか言ってみたわけですが、先にそっちのことばを使っちゃう人たちが世の中には多いので、実際にどんな仕事をしているのか、なかなか伝わらないんです。「地元コミュニティとのコラボレーションによってダイバーシティが生きるなんちゃら」とか。

三井 ああ、ありそう(笑)。

――そういう大雑把なことばではなく、「地元の人のお小遣い稼ぎ」「3万円×10で田舎では十分暮らしていける」っていうことばのほうが届くのだなということ、今日、三井さんのお話を聞いていて実感します。もう、大きな言葉では人が動かなくなっちゃったと思うんです。特に若い人は。「M&Aで1000億円」ではなくて、「広田のTシャツを1000枚売る」ということばのほうが、「あっ、それならわかる」っていう面白さを生み始めているのかな、と、ここまでお話をお伺いしていて思いました。

三井 あのTシャツ、いい素材を使っているんです。イベントとかのTシャツって、2、3回洗濯したらヨレヨレになっちゃうようなものが多くて、そういうの、嫌なんですよ。

――ということで、もとめさせて戴きました。読者プレゼントに使わせてください。応募要項は次回発表します。
※応募期間は終了いたしました。ご応募いただいたみなさま、ありがとうございました。
三井俊介さんがNHK仙台『クローズアップ東北』に登場します。
2012年10月19日(金)放送 ※秋田県以外の東北地方
>>番組詳細はこちらから
(プレジデントオンライン編集部=インタビュー・構成・撮影)
【関連記事】
被災地に移住した若者のことばを聴く[第2回]
なぜ若者は被災地に移住したのか?[第1回]
「絆ビジネス」は日本を救う小さな巨人になる
釜石から始まる「スマートコミュニティ」大国への道
「日本は均質」「東京が中心」は思い込み