被災地・岩手県陸前高田市広田町の人口が1人増えた。「移住者」三井俊介さんへのインタビュー第4回は、三井さんの「これから」のことを聞こうとしたのだが……。

三井俊介(みつい・しゅんすけ)
1988年、茨城県つくば市生まれ。高校時代はサッカー部所属。国際協力に興味を持ち、法政大学法学部国際政治学科入学。2008年、「WorldFut」設立。2009年4月から休学し、カナダとブラジルに留学。2010年2月に帰国、社会起業大学にダブルスクールで入学。2010年夏、カンボジア、中国、ベトナムを旅する。2011年4月、震災ボランティアで広田町に入り、通い続ける。2012年、法政大学を卒業。4月に広田町に移住。

明日、死ぬかもしんないし

――さて、この広田町での三井さんのゴールとは、どういうイメージなんですか。プレゼン資料のスケジュール表には「第四四半期」までしか書かれていない。その先はどう考えているのか。
三井俊介さん。広田公民館の内部にて。

三井 うーん、そうですね……逃げなのかもしれないけれど、ぼくは敢えて、そこはあんまり考えないんです。そこを考えちゃうことに対して……なんていうか……あまり意味がないような気がしちゃうんですよ。「だって、明日死ぬかもしんないし」みたいな思いが、ぼくの中で強いんですよ。

(現在の広田町での下宿先の)ジローさんとか、こっちの人たちと暮らしていく中で、自分の友だちが亡くなったとか、そういう話っていっぱい聞くんです。そういうのを聞いたら、なんか、何年先とか何十年先とか考えるのアホ臭いんですよ。それよりも今できることを一個ずつ積み重ねていく、そこにわくわく感があると思うんです、ぼくの中では。

未来のゴールに向けて走ることの面白さって、たぶん、ちょっと昔の話になっていくんじゃないのかなと思ってて……。そういうゴールよりも、「今、どんだけ楽しいか」のほうががけっこう大事で、ちっちゃいかもしれないけど、それをやっていったら、この先ちょっと世界が変わるかもしれない。それにどれだけわくわくできるかが大事――たぶん、ぼくの原動力はそこなんです。

「将来ここに向かって走って」という考え方よりも、「これを続けたらこうなるかもしれないわくわく感」のほうが、自分の中では強い。「敢えてゴールを見ない」なんて言ったら、そんなの無責任だろと言われるかもしれないですけれど、なんか「目標ありき」じゃ、ぼくはそんなに動けないですね。それよりも、今、この一個一個の活動がすごい楽しいですし、先のことを考えるよりは、一個ずつ形にしていくことにパワーを注ぎたいです。

――より早く、より大きくなる計画を立て、そのゴールに向かって動いていくことは、ずっと善だったと思うんです。でも、「それだけじゃないんじゃないの?」と三井さんは今、言ったように思います。事業計画を書け、エグジット戦略を立てろ、株を高くして売り抜けろという世界とは、まるで違う。

三井 そうですね……今、改めて聞いても確かに、うん、違うな、と思いますね。