これが広田で動かしている仕事

――そのプレゼン資料に書いた、三井さんが広田でやりたいこととは、具体的にどんなことですか。

三井 プレゼンの時に使ったパワポ見てもらったほうがいいかもしれませんね。外部に公開はしていないものですし、誰からも同意はまだ得ていないんですけれど……。

――じゃあ、私のほうで要約して読者の皆さんに伝えるかたちにしましょう。資料は全部でA4×9枚ですね。最初の3枚は広田町の概要。4ページ目に「はじめに――希望溢れる広田町へ」とある。これは、三井さんの活動のキャッチフレーズということですか?

三井 はい。まず広田町の町民にとって住みやすい町であること。次に、この町が、今どう「生きる」か悩んでいる人にとっての希望になること。この震災でそういう人がこっちにいっぱい来たんです。広田がそういう人たちにとってもきっかけが見つかるところであってほしいし。あと、日本全国の限界集落、全市町村の12%がそうなんですけど、広田はそのモデルケースのひとつになる。この3つを考えています。

――プレゼン資料の最後にある「町の公式HP作成」「個人の情報発信」「パソコン教室」「現地視察プログラム」「企業研修プログラム」「企業コーディネート」「長期滞在プログラム」「ネット販売」「広田町グッズ企画」「その他プロジェクト」、この10項目が、実際の三井さんの仕事という理解でいいのでしょうか。

三井 そうです。ぼくが広田で実際に始めているのは、1個のビジネスで50万円、100万円、1000万円という収益を上げるものではなくて、1個で3万円のビジネスにしましょうという考え方です。3万円のビジネスを10個つくれば、それで収入30万円。こっちだったら十分暮らせるんですよ。田舎だったら30万のビジネスを1つつくるよりも、3万のビジネスを10個つくるほうが、市場に、町民に合うんです。一個一個はちっちゃいし、確かに忙しいですけれど、そんなに無理があるわけではないかたちで、すべて同時に進めてやっています。

先週は、町の公式ホームページづくりの仕事を始めましたし、視察プログラムもやりました。企業の研修プログラムも9月の中頃を目途に一発目が打てそうです。

――「企業コーディネート」とはどんな仕事ですか。

三井 業務委託をイメージしてもらえば。今、お受けてしているのは、あるクラウドファンディングさんからの委託です。クラウドファンディングで集めたお金の使い途が人件費に限られているというサービスがあるんです。そこでぼくが、人を雇いたいけれど人件費の余裕がなくて困っている被災企業さんに、「こういうファンドがあるので使ってみませんか」と営業に行って、求人広告の原稿をぼくがホームページにアップすると、こちらにもおカネが入るというかたちの業務委託です。地元の人のほうがこういう営業はやりやすいはずなので、ぼくから地元の人にお渡していく。そうすると新しい職種が広田に生まれますし、地元の人のお小遣い稼ぎにもなるんです。これをぼくは「企業コーディネート」と勝手に名づけてやっているんです。今、2件くらい進行中です。

広田の海岸沿いの遊歩道は、津波で寸断されたままだ。
――「長期滞在プログラム」のことは、この先、実際に広田に長期滞在する方が来られると聞きましたので、次の機会に伺います。今日お伺いしておきたいのは、今日のお話の中にもあった広田の魅力である一次産品、それをどういうふうにビジネスに絡めていくのか、ということです。

三井 今、考えているのが「現地視察+広田町魅力発掘プログラム」です。前に一回試しでやったんですけれど、それが今日お話しした、広田のお母さんたちと一緒に町を歩くというものだったんです。そこでワラビだとか、おカネになってないものを一緒に参加者の人たちと見つけた。お母さんたちは、それが良いものだとわかっているんですけれど、それをおカネにする仕方がわからない。なので、外部の人たちと一緒に歩いてもらって、今度はそれを浜辺で参加者と一緒に食べましょうよ、と、お母さんたちに提案しています。このプログラムが将来的には広田の一次産品の経済に結び付く。

パソコン教室も、お母さんたちが自分たちで採ってきた一次産品を自分たちでネットに書き込んで、売れるようにするのも一つの狙いなんです。ぼくはこのネット販売の機能、町の広報の機能、そういうインフラを整える。で、書き込んだり売ったりするのは、お母さん、あなたたちがやりましょうよ、という話なんです。その下地として、パソコン教室に参加してもらって、まずは文字を打つ練習から始めて、エクセルで会計やって、パワポを覚えてPRの仕方を学んでもらって、最後にインターネットの使い方を学んで実際に売り始めるというようなかたちでつながっていくわけです。