韓国は日本と比べてレコード会社が強くない

世界的グループになったBTSが所属し、今、世界が注目する芸能事務所といえば、HYBEだ。先に挙げたSM、YG、JYPに比べると後発ではあるが、作曲家でプロデューサーのパン・シヒョクがJYPエンターテインメントから独立し、起業した。

2019年の営業利益は、韓国の芸能事務所大手3社のSMエンタテインメント(404億ウォン)とJYPエンターテインメント(435億ウォン)、YGエンターテインメント(20億ウォン)の合計を上回っている。オンラインに非常に強く、2022年上半期にはアルバム売り上げ1660万枚を突破している。

BTSは「LOVE YOURSELF てん ‘Tear’」がアメリカの週間アルバムチャート「ビルボード200」で初登場1位に輝き、非英語圏の歌手が入りにくいチャートとして挙げられるビルボードのメインシングルチャート「HOT100」で、デジタルシングル「Dynamite」が初登場1位を記録するなど、K-POP界の歴史を数々の記録で塗り替えている。

また近年では、独自のファンコミュニティアプリ「Weverse」や、ゲーム、スターバックスなどとのコラボなどのビジネス構築にも積極的で、さらに後輩たちの育成にも力を入れている。

以上のように、音楽産業はドラマとは別の流れで成長してきたが、韓国の音楽産業のひとつの特徴としては、日本に比べて従来、レコード会社の力が強くなく、ゆえに制作、マネジメント会社がイニシアティブを取れたという点であろう。それはまた、日本のような重厚な歴史がなかったことも影響しているのだろう。既存の枠組みにとらわれることのない自由闊達かったつな展開が可能だったということだろう。

韓国では日本以上にドラマと音楽の融合が進んでいる

そして、音楽はドラマと見事な相乗効果をあげている。男性では、例えば『花郎』ではZE:Aゼアのパク・ヒョンシク、SHINeeのミンホ、BTSのVヴィが出演しており、グループで活躍している俳優では元東方神起のパク・ユチョン、キム・ジェジュン、2PMのオク・テギョン、INFINITEのエル、EXOのド・ギョンス、ASTROのチャ・ウヌなど枚挙に暇がなく、その他Rain、チャン・グンソク、イ・スンギ、パク・ポゴム、チョ・ジュンソクなども音楽、ドラマでマルチに活躍している。

女性では、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』などに出演したIU(イ・ジアン役)をはじめとして、アイドルグループのmiss Aのメンバーだったぺ・スジ、少女時代のユナ、BLACKPINKのジスなどがいる。IUは是枝裕和監督の新作『ベイビー・ブローカー』(2022年6月公開)に出演しており、日本でもさらに注目が集まっていくだろう。

日本でもアーティスト兼俳優は少なくないが、韓国でも日本同様に、もしくはそれ以上の音楽とドラマの融合が進んでいるし、現在の音楽には不可欠になっているMVにおいても俳優が出演する事例が数多い。