【安田】私にも私の暴走を止めてくれる右腕がいてくれたらよかったのですね。次の事業では私は経営には携わらずに、アーティストに徹するつもりです。
【小阪】それがいいと思います。自分が経営に向いていないと感じたら、経営面で補佐してくれる右腕をもつか、もしくは自分がコントロールできる範囲以上に会社を大きくしないことが大切です。
【安田】私もそうでしたが、経営者は会社を大きくしたいと思いがちなんですよね。
【小阪】会社を大きくすることが、これからの時代は必ずしも是ではないと思います。規模を大きくすれば、確かに効率の面でのメリットは大きいでしょう。しかし、効率よりも価値創造を重視するなら、規模を追求しなくても勝ち残れます。むしろ、アーティストにとって大きすぎる図体は、不自由さが増すのではないでしょうか。それにいまは、小さな会社でありながら世界で活躍する企業が増えています。アーティストとして新たな価値を創造できるから、海外の顧客の心もわしづかみにしてしまうのです。
【安田】それはもしかすると、大国よりも小国のほうが美しいのと同じことなのかもしれませんね。もしスイスが中国くらいに大きい国だったら、憧れが薄れてしまいそうです。いまはインターネットが発達しているので、たとえ小さな会社でも、価値を創造し、発信するアーティストでい続ければ、消費者が見つけてくれる時代です。
大切なのは、アートな人材を育てることと、経営の蛇口はくれぐれもきちんと締めること。この2つを分けて考える必要があるということですね。
(前田はるみ=構成 葛西亜理沙=撮影)