「晩婚化」発言に見る、なんでも「女性のせい」
「異次元の少子化対策」後、最初に非難を浴びたのは、「(少子化の)一番大きな理由は、出産する時の女性の年齢が高齢化しているから」という自民党の麻生太郎副総裁の発言だった。この人のズレっぷりにはもはや驚きもしないが、自民党の高齢重鎮政治家たちが繰り返してきた、少子化の原因を女性の社会進出や晩婚化のせいにするという発言には毎回怒りを覚える。
シカゴ大学の山口一男教授は早くから、急激な少子化の要因を女性の非婚化、晩婚化だけに帰することに警鐘を鳴らしている。
山口氏の「少子化の決定要因と対策について:夫の役割、職場の役割、政府の役割、社会の役割」という報告書によると、少子化の主な要因は女性の非婚化と晩婚化であることに一定の根拠はあるものの、急激な少子化を経験している日本や韓国、スペインなどの国は他の先進国に比べ、妻の家事育児の負担が高く、「家族に優しい」職場環境も整わず、女性が出産で離職した後の再就職が困難だという共通項があると指摘している。
こうした国々に共通するのは、家事育児といった無償のケアワークは女性がするものという性別役割分業意識だ。男性の家事育児時間は短く、職場は長時間労働の男性中心で回ってきた。
韓国では1997年に直面した経済危機で多くの男性たちが失業して、女性たちが働くようになったが、保育園など社会インフラが整っていないために出産を諦めたり先延ばしにしてきたことが急激な少子化の一因と言われている。
育休から復職した女性がリタイアしてしまう理由
では、日本ではどうか。
2000年代になって法改正が進んだことから大企業を中心に育児休業制度や短時間勤務制度など両立支援制度は徐々に整備され、仕事と子育ての両立はしやすくなった。だがその制度を使っているのは誰かと言えば、育休も時短勤務もほぼ女性たちだ。
仕事を辞めずに済むようにはなったが、今度は「マミートラック」というようにキャリアに展望を抱けず、やりがい喪失といった新たな問題を生んだ。職場でも主力選手として見られない子育て中の女性は、家庭でも職場でも性別役割分業に晒され続け、家事育児の負担に加えて仕事も、という新たな重荷を背負うことになった。
育休から一度復職したものの、両立のハードさに耐えかね、職場ではやりがいを感じられないことから退職を選ぶ女性も少なくない。そしていったん退職してしまうと、再就職の際に正規雇用の道がほぼ閉ざされてしまう現実がある。