そういえば、カミさんとの夫婦喧嘩の原因にも似たようなことがあったな。
「普通、そういうのって奥さんがやってくれることじゃないの」って何げなく言ったら、「悪かったわね、普通じゃなくて!」ってものすごい剣幕だった。
「『普通は』とか『一般的に』は、思春期にかぎらず、女性に対しては最悪の言い方ですね。奥さんが怒る気持ち、すごくわかります。女性は、比較ではなく、『僕はこうしてほしい』と、結論まで言ってほしいんです。妻のやることが常識的なのかどうかというのは関係ないんです。その一方で、あなたという個人が『やってほしいんだ』と言ったとしたら、やってあげることにそれほど抵抗はない。『なんで食事ができてないんだ。夫が帰ってくるまでに用意しておくのが常識だろ』と言われたら反発するけど、『家に帰るころには腹ペコなんだ。食事を用意しておいてほしい』と言われたら、『しょうがないわねぇ』といいながら台所に立つわけです」
なるほど。ものすごく心当たりがあるなぁ。
「女性もそれなりの社会経験を重ねることで『常識』を頭から否定してしまうようなことはなくなるわけです。ところが思春期の女の子というのは、言ってみれば『女性』になりたて。社会性がほとんど身についていない、ある意味ピュアな『女性』なんです。だから『おまえの行動は非常識だ』と言われると、ストレートに反発してしまうんです」
そうは言っても、悪い友達とは付き合ってほしくないし、生活だって正すべきところは正してやらないと……。
「それはそうです。でも、頭ごなしというのは避けたほうがいいと思います。『あんな悪い友達とは付き合うな』と言われると、その友達と付き合っている自分を否定されたことになってしまい、拒絶反応も強くなります。注意するのであれば、お父さんご自身を主語として、娘さんにどうしてほしいと思うのかを伝えるようにしてみてはいかがでしょう」
自分を主語にするってどういうこと?
「例えば『最近、おまえの帰りが遅いから、お父さんはとても心配しているんだ。近頃は物騒な事件も多いだろ。せめて夜8時くらいには帰ってきてくれると安心なんだけどな』といった言い方です。それから、意外と効果的なのが奥さんを介して伝える方法です。『お父さんがずいぶん心配しているわよ』と、奥さんから娘さんに伝えてもらうのです。直接言われるよりも素直に聞くことができて、『心配をかけてしまった、傷つけてしまった』という負い目は、叱られる以上に心に残ります。女性はそういう面も強いんです」
逆に言えば、こちらが傷つけてしまった場合も、ずっと覚えているってことだな。妻との会話でも思い当たることがちらほら。気をつけねば……。