銃規制反対派の州知事は何を語るか

ただ、警備担当者が有益な情報をくれた。午後零時半からテキサス州のグレッグ・アボット知事、トランプ前大統領と共和党の大統領候補の座を争ったこともある州選出のテッド・クルーズ上院議員らの記者会見が地元の高校で行われるという。場所取りは早い者勝ちだから早めに行った方がよいとのことだった。

アボット知事、クルーズ上院議員は共和党の中でも右派色が強く、銃規制反対の旗振り役の一人だ。彼らは、2日後の27日からテキサス州ヒューストンで始まるNRA(全米ライフル協会)の年次総会にトランプ前大統領とともに出席する予定であることが明らかになっていた。今回の深刻な事態を受けて、共和党の大物たちが方針転換を表明するのか、それとも従来の立場を堅持するのか、全米注目の会見になることは必至だ。

高校に到着するとさすがに一番乗りではなかったが、警備担当者の助言通り、早めに到着したおかげで、1列目の記者席が確保できた。記者会見場は高校の講堂だ。日本の学校の体育館のように1メートル30センチほどの高さの舞台があり、そこに机と椅子が5脚ほど並べられている。椅子の前に置かれた大きな机には、正面にテキサス州知事と書かれた黒い色の布がかけられている。

記者会見は定刻に始まり、登壇者が入場してきた。アボット知事は真正面に着席し、その右後ろにクルーズ上院議員が立った。記者席から見て、アボット知事の左側は、知事の腹心のダン・パトリック副知事だ。

開始1分で「悪」「神」といった言葉を連発

会見はアボット知事の冒頭発言から始まったが、最初の1分だけでも、evil(悪)、god(神)、blessing(神からの賜りもの)と、キリスト教にまつわる言葉の連発だった。

光輝く空に浮かぶキリストのシルエット
写真=iStock.com/Ig0rZh
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「悪がユバルディの町を襲った。祖母を撃った人物の心には悪が宿り、子どもたちを銃撃した人物にはさらなる悪が宿っていた。学校を襲撃し、子どもたちを殺した人間がこの州にいることは耐えがたく、受け入れがたい。子どもたちは神からの賜りものだ。子どもたちには笑い、潔白、喜びが満ちていると神は我々に教えて下さっている」

冒頭発言には、追悼の言葉、容疑者が銃を入手した経緯、容疑者が学校に向かう直前にソーシャル・メディアで犯行予告を行っていたことなどが含まれていたが、銃規制についての言及は一切なかった。予想通りではあったが、愕然とした。