ロシア人も核戦争を懸念している
昨年5月と8月に実施された世論調査ではウクライナ戦争に対する高い支持とごく限られた懸念が示された。しかし9月に部分動員を宣言した後は戦争についてより広く議論されるようになり、幅広い層の人々が、自分たちの見通しとロシアへの経済的影響の両方に悲観的であることが示されたが、その多くは戦争の成功をもたらす方策に賛成していた。
調査で最も懸念されていたのは核戦争で、回答者は核戦争の可能性を減らす手段を講じることに賛成していた。「ロシアが核兵器使用をちらつかせるのは、ウクライナや米欧を威嚇するのと同程度に、ロシア国内の恐怖心を高める狙いがある。その恐怖を低減するためには政府を支持する必要があると思い込ませるのだ」とワトリング氏は分析する。
今のところ万歳愛国者の批判は特定の司令官や地方行政官の動員対応、社会の態度に向けられている。しかし、こうした批判がプーチン氏に向けられ始めたら、ロシアで最も不満を抱いている層が「ポスト・プーチン」を模索することになるかもしれない。しかし世論は5グループに分かれ、その中の万歳愛国者は3つに分裂している。
プリゴジン氏とガーキン氏が対立している限り、プーチン氏は安泰だ。戦場で死傷者が出ても非難の矛先が自分に向かってくることはないと高を括っている。「世論調査から読み取れるのはクレムリンが戦争の損失を維持できるということだ。世論に与える影響が少ないため、クレムリンは戦争の長期化に安住しているように見える」とワトリング氏は指摘する。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら