「俺のバックには山健組がいとるんや」

「ボクシングの強豪校に推薦が決まっていたけど、教頭先生を殴って推薦が飛んだんですわ。学校が被害届を出し、更生施設送りになったと校内で噂が立った。実際、三年生の大半は学校に来ていなかった」(同)

地元の高校に進むも中退した寺内は、大阪市中央卸売市場に勤め始めるが、祭りですれ違った同級生に対して、

「お前、金持ってるか。俺のバックには神戸の山健組がいとるんや」

と凄んだという。

髪を金色に染め、バラのタトゥーを右胸に刻んで、どっぷり夜の世界に浸かっていった。

バーでワイングラスの後ろに
写真=iStock.com/Nikada
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「十三年、大坂のショーパブ『K』に二十歳そこそこの寺内が入店してきた。すると直後、酔って先輩従業員に暴行したのです。警察沙汰にはしなかったものの、本社のある東京で教育し直すことに。ところが、指導を厳しく感じたのか、あいつは二~三カ月で飛んでしまった」(元同店経営者)

逃げるように大坂に舞い戻った寺内はさまざまな飲食店を渡り歩いたという。

2015年3月、窃盗容疑で大阪府警に逮捕される。そんな寺内を拾ったのは兵庫県内のキャバクラだった。

黒服として働いていたが、見かけによらずレディファーストだったという。女性には一途で、高級バッグをプレゼントしたりしていたそうだが、信じられないほど幼稚な面があったという。

「自分は別れていない。許さんぞ」

当時の交際相手はこう語っている。

「束縛が激しく、携帯を盗み見るなんて日常。友達と遊びに行くときは、いつでも連絡できるようにしておかないと彼は怒り狂うから、遊びにも行けへんかった」

その過度な束縛癖が嫌になり、彼女は警察に相談に行ったという。しかし、別れた後も家に来て、「別れてない」としつこくいい続けたそうだ。

大阪市東淀川区に知人と一緒に「ぼったくりバー」をオープンさせたが、数カ月で潰れた。

周囲に「人生をやり直す」といって、縁もゆかりもない九州へ飛び立ち、鹿児島や熊本を経て、福岡の地に足を踏み入れたのは約1年前だったそうである。

そして昨年春、川野さんと知り合い、交際を始めたという。男と女というものは不思議なものだ。寺内のどこに彼女は惹かれたのだろう。

だが寺内は本性を現し、彼女を束縛していく。寺内の言動に危険を感じた彼女が、初めて福岡県警に相談に行ったのは昨年の10月21日のことだった。

「携帯電話を盗られた。相手とも別れたい」

切羽詰まった様子で被害を訴え、その翌日、寺内に別れを告げたという。だが寺内は、「自分は別れていない。許さんぞ」と繰り返した。

10月24日に警察から警告を受け、それでも、寺内が彼女の職場に押しかけたり、電話をしたり、つきまとい行為を止めなかったため、11月26日に春日署はストーカー規制法に基づく禁止命令を出した。