「理工系秀才集団」が直面する試練
このままだとその恐れがある。国の宇宙機関として活躍するためには、民間と同じようなことをするのではなく、リスクが大きく民間だけではできない日本独自の魅力的なプロジェクトを考え出し、実現させることが必要だ。その視点が現在の日本政府の戦略には不足している。
独自の魅力あるプロジェクトを進めるためには、一般の人々の理解を求めることが欠かせない。コミュニケーション力やリスクマネジメント力を磨く必要がある。だが、「理工系秀才集団」はそれが苦手のように見える。
米国頼りのリスクも念頭に置いておく必要がある。
米国はよく宇宙政策を変更する。冷戦時代に宇宙開発でソ連と対抗した米国だが、ソ連が崩壊すると、米国の判断で、西側陣営の宇宙ステーション計画に招き入れ、世界を驚かせた。
その後もISSで日本が米国の判断に振り回されることも多く、政府の間では「米国頼り一辺倒ではいけない」という反省の弁が漏れた。
そうした体験をどう生かしていくのか。日米関係の強化、アルテミス計画、という大きな変化の時代だからこそ、将来を見据えた日本の戦略を考え、実行することが必要だ。