「環境への意識の高さ」だけが理由ではない

「ついに来たか」

Aさんの「タッパー発言」の後、私が思ったことです。彼女の発言に驚きはしましたが、決して想定外ではなかったのです。そう思った理由は2つあります。

1つは長年、大学、専門学校などで学生と接してきて、ここ数年で環境への意識を高く持つことは「特別なことではなくなった」と感じていたからです。学校に水筒を持参することや食べ残しをしないこと、ゴミの分別を完璧に行うことなどは、ほとんどの学生が当たり前にやっています。

私自身もフードロスなどに対する意識は高い方だと思っていましたが、学生の環境への意識に驚かされることが多いです。実は勤務する短大でも先日、ドレスの廃棄が問題になったばかりでした。授業に使用するウエディングドレスを買い替えた際、古いドレスで小物をリメイクすることを学生たちに提案されたのです。皆、洋裁ができるわけではないのですが、捨てるのはもったいないと言っていました。

部屋に用意されたウエディングドレス
写真=iStock.com/mictian
※写真はイメージです

もう1つはウエディングというセレモニーへの意識の変化です。

30年以上ウエディング業界で仕事をしてさまざまな変化を見てきましたが、震災の後あたりから「地に足がついた」と表現したくなる花嫁が増えました。結婚式には古くからのしきたりや式場側が提案する世界観があり、「いつもの自分ではない自分でいること」「非日常」を求められます。しかし、最近は特別な日であっても、あくまでも日常の延長であり、自分らしさをバランスよく取り入れようとする花嫁が多いのです。

「セレモニーライフバランス」を取る新婦たち

私はワークライフバランスならぬ「セレモニーライフバランス」と呼んでいるのですが、彼女たちからは、「セレモニーにおいてもふだんの自分がやらないようなことはしたくない」という静かな意志を感じます。例えば披露宴のドレスは鮮やかな色ではなく、くすみカラー、ニュアンスカラーとよばれるグレーやベージュが人気だったり、引き出物に自分が愛用しているブランドの品を選んだりするのもその表れでしょう。

Aさんがタッパー持参にこだわったのも、「ふだんフードロスをしない自分が、いくら結婚式だからといって食べ物を廃棄するきっかけを作りたくない」ということなのです。