寒さよりも暑さのほうが苦手

次に、②については、4本の肢と耳の黒で説明できます。パンダの主な生息地は中国四川しせん 省・陝西せんせい省・甘粛かんしゅく省(かつてはベトナムやミャンマーの北部にも生息していたと考えられています)。

標高が1200〜3400mの山岳部の竹林で、平地より寒冷な環境です。人もそうですが、寒い時、体の末端は他に比べて冷たくなりやすいですね。パンダも同じ。

そこで耳や肢先を黒にして、熱吸収をよくしているのです。背中にも黒い部分が回っているのも、太陽の熱を受けやすくするためでしょう。ちなみに、足の裏は指の肉球部分以外には黒い毛がみっしり生えています。

そして③。パンダが生息しているのは霜が降りたり、雪が降って積もることが多い環境。白はその雪に紛れ、黒い部分が岩陰や樹木の陰に同化して、カムフラージュになるのです。また、竹林では白い部分と黒い部分が別々に紛れて、見分けがつきにくくなります。

生息地の環境で外敵といえばユキヒョウ、ジャッカル、アジアゴールデンキャットなどの肉食獣。赤ちゃんだけでなく、ケガをしたりして弱ったおとなのパンダも狙われやすいので、気づかれないようにすることが必要です。

生息地の山岳部は夏も比較的低温で、冬はマイナス10度を下回ることもあるといいます。そのため、パンダは寒さよりも暑さのほうが苦手で、冷たい氷や雪が大好きです。

アドベンチャーワールドがある和歌山・白浜は温暖な気候なので、冬でも氷点下まで気温が下がることはあまりありません。真冬でも屋外の運動場で元気に過ごします。

逆に外気温が20〜25度になると、様子をみながら冷房の効いた屋内で過ごせるようにしています。ちなみに、パンダラブの屋内運動場は、9台のエアコン完備です。

誕生日やイベントには、大きな氷や雪をプレゼントすることがあります。手に持って抱きしめたり、おもちゃにして遊び、たっぷり楽しんだ後は、体をびちょびちょにして満足げにバックヤードに帰っていきます。

かつては小動物が主食だった

パンダの祖先は、800万〜900万年前に生息していて、すでに絶滅したクマ科の動物といわれています。そして200万年前ごろから、現在に近い生活になったと考えられます。

ちなみに、人類の祖先が登場したのが400万年前ですから、パンダが「生きている化石」といわれることがあるのもうなずけますね。

かつてはネズミのような小さな動物を食べていましたが、260万年前の氷河期になってエサとなる生きものが減ってしまったことがありました。わずかなエサをほかの肉食動物と取り合う争いを避けて、また、自分や子どもが肉食動物の標的にならないように、だんだん標高の高いほうへと移動していったと考えられています。

そして、高地でも繁茂して常緑性、春にはタケノコも出る竹を食べ始めたことが現在まで続いているのです。

肉食だったのに植物を、それも樹木の柔らかい葉ではなく、固い繊維質で水分も少なそうな竹を食べるとは、生きるためにワラにもすがるような必死な時期があったんですね。

もとはエサになる動物をつかまえていたパンダですから、動きがそれほど遅かったわけではないようです。今でも機敏さは残っています。ふだんののんびりさからは想像しにくいかもしれませんが、全速力で走ると時速30キロといわれています。

ただし、栄養価の低い竹を食べていることもあり、持久力はありません。ですから、時速30キロで走れるのですが、長距離走には向いていないタイプといえるでしょう。