事業は借金頼みで、独自性が出せない

4位の沖縄県北大東村(374万円)、11位の伊平屋村(243万円)を含め、貧しい自治体の上位は離島が多い。税収が乏しいため事業は借金頼みで、国が面倒を見ないと立ち行かない。借金の返済時には交付税で国が負担してくれるものも多く見た目の数字ほど厳しいわけではないが、1人当たりの実質債務は68町村で100万円を超え、うち13町村は200万円を超えていた。

54位の熊本県益城町(111万円)は町村の中で実質債務が最も多く、5年間で実質債務を261億円増やした。熊本地震に見舞われ、その復旧・復興に多額の資金を要したことが響いている。

債務が多い町村は、どうしても国が用意した補助金のメニューや交付税措置が手厚いもの中から事業を選ぶことになり、独自性は発揮しにくい。かつての小泉政権のように、その時々の国のスタンス次第では行財政運営に支障を来す可能性もある。

総務省の同種指標との違い

なお、実質債務は財政融資資金の貸し手である財務省が、自治体向け融資の償還確実性を評価するために開発した「財務状況把握」の計算式に基づいて算出した。

総務省にも「将来負担額」という似た指標があるが、財務省の実質債務に比べて金額が小さくなる(マイナスの場合は大きくなる)。

最大の違いは、償還財源が地方交付税の基準財政需要額に算入される臨時財政対策債などを債務から除いてしまうことにある。国から後でもらえるという理屈で債務を少なく見せるわけだが、自治体の借金であることに変わりはない。財務省の指標の方が民間の感覚に近い。

そもそも、交付税の総額は前年末の財務省と総務省の予算折衝で決まってしまう。交付税の算定上は「交付税措置」された元利償還金が必ず上乗せされるが、全体の額が十分確保されていなければ、総務省が他の費目で調整して自治体への配分額を減らすことになる。